ビール減税を喜べないメーカーの深刻な事情 「第三のビール」は消滅、酒税法改正の狂騒曲
最大の書き入れ時である年末商戦に向け、今年もビールメーカー各社の安売り合戦が熾烈を極めている。
サントリービール「金麦」やキリンビール「のどごし〈生〉」、アサヒビール「クリアアサヒ」など、低価格の新ジャンル(第三のビール)は、350ミリリットル缶がコンビニで143円(税込み価格)だが、スーパーでは特売の目玉として20円以上も安く売られている。
だが、こうした新ジャンルは存在そのものが消える日が近づいている。自民党と公明党が12月8日にも公表する税制改正大綱で、ビールなどにかかる酒税の一本化を盛り込む方針だからだ。
増大する新ジャンル
そもそもビール類は原料や製法によってビール・発泡酒・新ジャンルの3種類に分かれ、税率が異なる。最も高いビールの場合、350ミリリットル缶当たりの酒税額は77円。ビール酒造組合によれば、米国の9倍、ドイツの19倍の水準だという。
そこで各社が乗り出したのが、より税率が低く店頭価格が手頃な発泡酒の強化や新ジャンルへの参入だった。
発泡酒の場合、ビールに比べて、主原料である麦芽の比率や副原料に使用できる素材の自由度が高い。そのため、「糖質オフ」「プリン体ゼロ」といった、機能性の高い商品を次々と投入している。
一方で新ジャンルについては、2004年にサッポロビールが「ドラフトワン」を発売したことを皮切りに、キリン「のどごし〈生〉」といった商品が次々と登場。テレビCMやキャンペーンなど膨大な宣伝広告費をつぎ込み、販売数量を伸ばしてきた。
こうした努力が実り、現在は国内のビール類販売のうち、発泡酒は15%、新ジャンルは35%という水準まで拡大している。
それでも、国内のビール類市場全体はピークだった1994年の約705万キロリットルから2015年には537万キロリットルまで減少。これ以上の市場縮小を食い止めるため、業界を挙げてビール類の大幅な減税を陳情してきた。
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