長州の女性起業家は「日本酒革命」を目指す 山口で生まれた唯一無二の日本酒とは?

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このときに植えた稲を、地域の農家の協力を得て減農薬、有機肥料で栽培し、収穫後は自然乾燥して、「田楽米」と名付けてブランド化。松浦さんが「やり手!」と評する「おんなたちの古民家」の理事で元商社マン、原氏の発案でこのコメをきり箱に入れ、2キログラム5000円を超える日本一の超高級米として都内に売り込み、高島屋の店頭に並んだ。

さらに、地元企業と連携して田楽米を使ってスイーツ「モチペッコ」「和酒彩菓田楽庵」を開発するなど事業を拡大。あっという間に古民家という枠を超え、徳佐で本格的に米作り、お菓子作りに携わり、手応えを得たことが酒造りに発展していく。

「コメ農家の仕事をつくるには、消費量を増やすしかない。いちばんコメを使うのは液体だから、お酒を造ろう! となったんです」

ちょうどその頃、一般社団法人ミス日本酒のメンバーと知り合い、日本酒の現状を聞いて、松浦さんのターボエンジンにさらに火がついた。

「日本酒もワインと同じ醸造酒で、すっごく手間暇かけて造っているのに、ロマネコンティやドンペリニヨンと同じような価値のものがないんです。それで、ミス日本酒の方が、ひとつくらいドンペリみたいな日本酒があってもいいと思うと言っていたのを聞いて、せっかく日本酒を造るんだから、ドンペリみたいな日本酒を造ろう! って」

異端児のコラボレーション

徳佐には酒蔵はない。それなら、ということで松浦さんが目をつけたのが、故郷の錦町に酒蔵を構える、創業1764年、山口県最古の歴史を誇る堀江酒場だった。

創業以来、錦川の清流を仕込みに使用してきた堀江酒場 (提供:ARCHIS)

松浦さんが最初に堀江酒場を訪ねて話をしたとき、堀江酒場の杜氏、堀江計全(ほりえ かずまさ)さん(39)は「はあ?」とキョトンとしていたという。それもそのはず、堀江酒場は創業以来、蔵の中には関係者以外誰も入れず、規模も拡大せず、地元密着で独自の酒造りを守ってきた酒蔵なので、素人から持ち込まれた酒造りの話などもっての外であった。

次ページ錦町が生んだふたりの異端児がジャンルを超えて共鳴
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