北朝鮮、路上生活の子を減らした金正恩の力 父のやり方を変え、農業改革で食糧事情改善
まず金正恩は、軍部隊に割り当てられていた農地を拡大する一方、住民を当てにするなと厳命した。軍部隊には約20万ヘクタールの農地を割り当て、軍が自主的に農業を行って食糧供給の問題を解決せよと指示したためだ。これで農民は「先軍政治」の名目の下、生産された穀物を軍部隊から強制的に持ち出されることがなくなり、農民たちは歓迎した。「愛国米」の調達負担も減った。
こんな現象も見られた。2013年に北朝鮮の市場で多く売られていた商品の1つは豚肉だった。これは愛国米として、コメの代わりに年間ブタ1頭分を半強制的に上納していたことがなくなり、豚肉が市場へ流入する現象が発生したせいだった。
次に協同農場の生産性を向上させるよう、画期的な措置をとった。農場員に月給を支給せず、生産分の7割を取り置くことにした。1979年に金正日が協同農場の国営化を行う前の状態に回帰させたことになる。このために「圃田担当制」を実施。この制度は、従来は公平性を保つとの理由から農場員が担当する土地を1年ごとに替えていたが、今後は1ヘクタール程度の圃田を一世帯に任せ、そこを継続して耕作するようにしたものだ。事実上、農家に対し、農地を分け与えたことになる。
さらに国家からは土地を貸し、種や農機具などを貸し与える代価として、生産物の3割を徴収。もちろん土地ごとに生産性が違うため、一括して、国家3対農場員7の原則を適用するのではない。全域の農業地域を対象に土地生産性を再調査し、これに基づいて分配率を決定していった。生産性が相対的に低い地域は、国家2、農場員8とするケースもあるという。
「トウモロコシごはんを食べる人はいません」
北朝鮮全域で完全に定着した状態ではないゆえ、地域ごとにその評価には差がある。たとえば、平安北道は圃田担当制が定着したことで、生産性が最も高まったという。この地域は、中国と国境を接している新義州を通じて各種農業機械を導入する一方、よい種子を熱心に求めている。
一方、相対的に食糧が豊富な黄海南道は、北朝鮮最大の穀倉地帯であるにもかかわらず、農民が生産性向上にそれほど関心を見せておらず、まだ生産性が向上していないという。肥料生産も一部で正常化され、石炭化学工業で出てくる化学肥料の生産が一部で正常化し、外部から調達する肥料の量も減ってきている。
北朝鮮全域で生産される穀物量は、年間約600万~700万トン程度だ。早い時期に1000万トン生産という目標達成に注力している。金正恩政権が始まってから、チャンマダンで取引されるコメの価格は、1キログラム当たり0.62ドル程度と安定。国際社会の対北制裁で、北朝鮮に流入する食糧が2000年代より大きく減っているにもかかわらず、市場価格が安定化しているのは、内部からの安定供給が続いているために外部から取り寄せる量が減っていることと、比較的安定した供給ルートがあることを意味する。
生活費を調達するには、生産した食糧を市場で売らないといけなくなったため、協同農場を市場と連携させるほかなくなった。金正恩政権が市場を事実上、許容せざるをえなくなったのだ。実際に政権が始まって以降、市場拡大を抑えるための取り締まりがはっきり減っているという。
北朝鮮住民はこのように言う。「今トウモロコシご飯を食べる人がどこにいますか」と。市場に行けば穀物の種類を選んで食べることができる。「国が外部からのリスクをなくすことに注力すれば、北朝鮮住民は自主的に生活できる」とまで言うようになったのだ。
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