(第10回)自分だけの優良企業を発見するのが理想の業界研究だ

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(第10回)自分だけの優良企業を発見するのが理想の業界研究だ

八木政司

 第8回第9回にわたって業界研究について述べてきた。理由は、就職活動の初期段階では様々な業界を大局的な視点で研究することが、自分自身の就職活動の軸を持つことにつながり、ひいてはもっと深く知りたくなる企業と出合う確率をぐっと向上させると考えるからだ。
 以前にこの連載でも触れたが、就職ナビなどのメディアは、調べたい企業や仕事がある程度明確になってはじめて有効に機能するツールだといえる。就職活動の初期段階から自分の持つ知識や情報だけで社会や企業を見る癖がついてしまうと、どうしても大手企業や有名企業に目が奪われがちになる。フラットな視野で行う業界研究の意味を、誰も知らない自分だけの優良企業を発見するための取り組みだと捉えることができれば、少しは皆さんのモチベーションをあげる足しになるのではないか。

 昨年の夏、就職活動を終えた内定者数人を取材した際に、「セミナーや説明会は片っ端から参加すべき」というやり方をさかんに勧めた学生がいた。仮にその学生をAさんとしよう。筆者がAさんにその理由を問うと、「就活をする学生は会社や仕事を知らないんだから、どんどん知らない場所に行って情報を収集すべきだし、就活はそれができるまたとない機会だと思う」というものだった。
 しかし、よくよく聞くと、Aさんは1年間大学を休学して、中国に留学を経験している"大学5年生"。たいへんなバイタリティの持ち主であるAさんには5年目の覚悟があった。ちんぷんかんぷんだった中国語を現地で猛勉強し、わずか半年間で日常会話を操れるレベルに到達。そこからは持ち前の人なつっこさと旺盛な好奇心で中国人社会に飛び込み、私が中国で仕事をするなら、「どんなものを作って売るか」「どんなサービスを提案するか」という視点を常に持ちつつ、現地の中国人とコミュニケーションを交わし続けたという。

 留学先の中国から年明けに100社以上にエントリーを行い、帰国後は周囲に比べて出遅れの焦りを感じながら、それを取り戻すべく80社を超える企業のセミナーや説明会に参加した。肉体的にも、精神的にも超ハードなスケジュールをこなす日々に、体調を崩すこともしばしばだったという。
 筆者がAさんに「業界研究をしましたか」と質問をしたところ、Aさんは「中国で現地の人とコミュニケーションをとり続けたことも役立ったと思いますが、とにかく数を回るうちに自分がどのような業界に向いているのか、なんとなく分かるようになってきました」と語った。
 「でも、Aさんにとって会社を選ぶうえで、これだけは譲れないものはあったでしょう」と聞くと、Aさんは即座に「未成熟な海外市場を持っている会社」だと答えてくれた。

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