筆者がかつて採用をお手伝いした中小企業に、世間的にはまったく知られていないが素晴らしい企業業績とオンリーの技術、格付け企業が審査をすればトリプルA間違いなしという超健全な財務体質を持つD社という会社があった。同社は加工印刷の分野に欠かせないパーツメーカーで、国内はもちろん、世界でも圧倒的なシェアを持つ会社。
そんなD社の社長取材の際に出た“当時は記事にできない話”として「私はいい会社とは、潰れない会社だと思っています。もし“御社のような筋肉質な会社を探し当てました”とアピールしてくる学生がいれば、その場で内定を出してもいいと思っています」と打ち明けてくれたことがある。
理由を聞くと「当社の学生に対する知名度の低さ、勤務場所の不便さはおわかりでしょう。だから、そんな学生と会ったら、よくぞ探し当ててくれたという努力を評価したいと思います。相当、色々な角度から業界を研究しないとまず当社のような会社はヒットしないですからね」ということだった。ちなみにその会社は、大手企業と比べても遜色のない給与体系を誇り、個人に任される裁量も相当大きく、海外で仕事をするチャンスにも恵まれていた。
視野を広げ、知名度を頼りにせず、自分に合う業界や企業に出合うための就職活動をするうえで、その羅針盤になるのは、業界研究と就職活動の軸だということが、少しはご理解いただけたかと思う。
次回からは、企業研究や仕事研究について述べていきたい。
何人かの読者の方から、事例にあげたD社の正体を明かしてほしいという声が聞こえてきそうだが、それは自分で脳みそを使って探してほしい。なぜなら、それが業界研究そのものだし、この連載は「やさしくない」ことをタイトルに掲げているのだから。
採用プロドットコム株式会社 企画制作部 シニアディレクター
1988年関西学院大経済学部卒。大手就職情報会社で営業、企画部門で主にメーカーの採用戦略をサポート。その後、全国の自治体の地域振興に関る各種施策や計画書の策定業務に携わり、2000年から再び企業の採用支援業務に取り組む。08年4月より現職。
採用プロドットコム株式会社 https://saiyopro.com/
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