八木政司
●業界を俯瞰した業界研究
前回、皆さんに「フラットで先入観のない視点で業界研究をやりましょう」という提案をした。「フラットで先入観なくということは、万遍なくすべての業界を研究する」ということだと、手始めにリクナビ2009のトップページにある「業種から探す」というコンテンツを見たとしよう。
すると、そこには「メーカー」、「商社」、「百貨店・ストア・専門店」、「金融・証券・保険」、「情報(通信・マスコミ)」、「ソフトウェア・情報処理」、「サービス」の7つの業種が並ぶ。
試しに「メーカー」をクリックすると「水産」を筆頭に「縫製(和裁・洋裁)」まで、43の業種がズラリと並んだ画面が登場する。
そこで皆さんは「フラットな視線って言うけど、この膨大な数の業種(業界)を“どうやって研究すればいいの??”」という疑問が浮かぶわけだ。
ここで思い出していただきたい二つのアドバイスがある。
(1)まずは就職活動にかかわる情報の編集方針ともいえる軸を持つこと
(2)編集方針というべき軸を持たずして最初から就職ナビで会社を探そうとすると混乱をきたす
というものである。(1)については、「視野を広く、物事の見方を変えてみよう」という話をした。
そして、(2)については業界研究は究める必要はなく、広く浅く俯瞰することがポイントであると述べた。
筆者が就職活動をした20年ほど前は、市場経済を否定的に捉え、官庁による行政指導によって、業界団体を規制する護送船団方式が多くの業界でまかり通っていた時代であった。
銀行の金利が一律だったことに象徴されるいわゆる業界横並びだ。そういった慣習は歴史の長い名門・老舗といわれる業界ほど根深く、現在と比べると、特に非メーカーなどはひとつの企業が持つ特徴を見出しにくかったものだ。しかし、80年代半ばから進んでいた業界の体質転換が90年代の終盤にかけて一気に進み、現在、護送船団方式といったやり方では企業や経済のシステムは立ち行くはずもない状況となった。
業界から横並び意識が消えたということは、同じ業界でもその中身は千差万別であり、多種多様であることを意味する。
生き残るための差別化戦略が進んだ業界を細かく研究しようとすれば、それは企業研究ということになり、広く浅く俯瞰的な業界研究にならない。各企業の具体的な事業についは、もう少し業界を絞った段階で研究するとして、まずは業界全体を大局的な視点で見つめてみよう。
「みんなの就職活動日記」で知られる楽天株式会社の矢下茂雄氏(人材事業ビジネスユニット副事業長)によると、「2009年度卒の学生のマインド変化を一言で言い表すと“ババをひきたくない”という言葉で表現できる」という。
「本当の情報を知りたい」というニーズが学生をみん就へ向かわせる理由であると同時に、複数の内定を獲得し、選択肢を増やした後で本当の情報と整合し、後悔のない判断をしたいという意識も見てとれるというわけだが、そのような意識があるなら、企業研究の下準備となる業界研究はなおさら重要な準備である。俯瞰的な業界研究をすることによって、同じ業界でも成果を出している企業と出せない企業が存在する。
具体的な企業研究に入る前に、各業界の持つ特徴や将来性を大まかにでも掴んでおけば、「ババをひかない」判断、すなわち編集方針に例えた「就活の軸」を醸成することにつながるのである。
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