旭化成建材、63万円インサイダー摘発の深謀 上場グループ社員の株取引を規制強化か?

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旭化成には、インサイダー情報に当たる「重要事実」が発生した場合、グループ各社に「情報を開示するまで旭化成株を売買しないように」と注意喚起する仕組みがある。

一方で、この仕組みがあることから、旭化成株を売買する際、それぞれの会社の総務部門や法務部門への「事前届出制」は設けていない。つまり、届け出が必要な事態が起きたら親会社がグループ各社に売買禁止を伝えるので、届け出は不要という考え方だ。これは当時も今もそうである。

この点は監視委員会も把握し、旭化成のインサイダー取引防止の仕組みに理解を示してもいる。「インサイダー取引を防止する仕組みはいろいろな仕方がありうる。事前届出制を採用しているからよい、採用していないから悪いということではない」(監視委員会)。

「バスケット条項」を初適用

ただ、男性が旭化成株を売った2015年10月7日と9日、旭化成は注意喚起をしていなかった。男性が売却する前に旭化成が「重要事実」だと判断してグループ各社に売買禁止の注意喚起をしていれば、今回の事件は起きなかったという面もある。

旭化成の浅野敏雄社長は、子会社の杭打ちデータ不正問題の責任をとって辞任した (撮影:風間仁一郎)

この点について旭化成は「(当時はまだ)情報収集の過程であり(施工データの転用・加筆が)『重要事実』だと判断できる状況になかった」とグループ各社に注意喚起しなかった理由を説明する。つまり男性の株売却は社内ルール上、問題なかったわけである。

それでも監視委員会は今回、施工データの転用・加筆は「重要事実」に当たるとして、男性に課徴金を課すべきだとした。なぜだろうか。

金融商品取引法には、インサイダー情報に当たる重要事実が「新株発行」「業績予想修正」など具体的に列挙されている。今回焦点となった「施工データの転用・加筆」は、具体的な事例として掲げられていない。

一方で、金融商品取引法には「バスケット条項」という規定がある。具体的な例示はなくても、「投資判断に著しい影響を及ぼすもの」であればインサイダー情報とみなすという規定だ。

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