インサイダー取引は「少額」でも逃げられない 京王ズHD株売買、60代男性が利益を得たが…

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今回の事件で男性が得た利益は58万円。少額でも監視されていることを証券取引等監視委員会は世に示した格好だ(撮影:尾形文繁)

どんなに少額でも、インサイダー取引は決して見逃さない――。今回の事件は、証券取引等監視委員会(SESC)のスタンスを明確に示したものと言えるだろう。9月21日、SESCは宮城県仙台市在住の60歳代の男性会社役員に60万円の課徴金の納付命令を出すよう、金融庁に勧告した。

SESCによれば、本件は2014年3月にさかのぼる。この男性は、携帯販売大手の光通信が同じく携帯販売会社の京王ズホールディングス(以下HD)の株を公開買付け(以下TOB)することを公表前に知った。男性はTOB契約締結の交渉に当たっていたので、公表前に知ることができたのだ。

男性は知人の証券口座を借り、2014年3月20日と26日の2日にわけ、計2700株の京王ズHD株を計89万円で購入。両日とも京王ズHDの株価は300円台前半でもみ合っていた。男性の平均購入単価は331円だったという。

わずか10日で58万円の売却益

光通信が京王ズHDのTOBを発表したのは同26日の午後8時過ぎ。同日終値より221円も高い1株555円というTOB価格であったことから、翌朝から買いが殺到。翌27日、翌々28日はストップ高となった。

京王ズHDの株価が落ち着いたのは翌週明けの31日。TOB発公表前は1日当たり数千~数万株しか売買が成立していなかった京王ズHD株は31日に61万株もの売買があった。

男性が売り向かったのは、株価がTOB価格の555円に近づいてきた4月4日のことである。同日の始値は548円、終値は550円だった。この日と翌営業日の7日(始値も終値も550円)の2日にわけてこまめに売却。最後に買った3月26日から数えると、わずか10日で58万円の売却益を得た。

元手89万円で58万円の利益を得たのだから、利益率は実に65%。それを10日間で実現したのだから、まさに「濡れ手で粟」である。しかも男性は信用買い(証券会社に資金を借りて売買すること。約3倍の取引ができる)で行ったのだから、実際の元手はさらに小さく、正味の利益率はもっと高かったと見られる。

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