出光"内紛"激化で高まる経営統合破談の不安 創業家が「自腹」で株購入、奇策で統合阻む
昭和シェル石油との合併をめぐり、出光興産と創業家の対立が収まらない。
両社は2017年4月の経営統合を目指してきたが、今年6月28日の出光の株主総会で、創業家が「企業文化が全く異なる」と反対を表明。7月11日に出光の月岡隆社長(65)と、創業者長男で元社長の出光昭介名誉会長(89)が直接会談を行ったものの、両者の主張は平行線で協議は膠着していた。
事態が急変したのは8月3日。創業家の代理人を務める浜田卓二郎弁護士が報道陣を集めて、昭介氏が個人名義で昭和シェル株40万株(0.1%)を取得したことを公表し、強硬手段に出たのだ。わずか0.1%にすぎないが、これが9月中に予定される出光の昭和シェル株取得を阻む、“奇策”となりうる。
わずか0.1%で規制に抵触することに
もともと出光は市場外の相対取引で、英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルから昭和シェル株を取得し、その取得比率を3分の1以下=33.24%にとどめる契約を結んでいた。3分の1を上回ると、広く株主の平等性を担保しなければならない、“TOB(株式公開買い付け)規制”に抵触してしまうためだ。
しかし、資産管理会社や親族を合わせ出光株の2割以上を握る創業家は、出光からすると、金融商品取引法上の「形式的特別関係者」と見なされる可能性がある。この場合、昭介氏が今回取得した0.1%の昭和シェル株は「出光分」と認識され、出光の取得比率は合計33.34%になり、3分の1を超えてしまう。出光は昭和シェルに対し、TOB以外を選択できない。
つまり昭介氏は昭和シェル株を買い、TOBしかできないよう出光を追い込んだ。
出光にとって、TOBによる昭和シェルの子会社化は、鬼門だ。2014年末に、昭和シェルが出光の子会社になると報道された際には、昭和シェル側の特約店が猛反発し、後に「対等の精神」での「合併」と決めた経緯がある。また同業の中でも特に有利子負債の多い出光は、TOBに伴う借入金の拡大で、財務基盤が一層悪化する懸念も残る。
創業家側の浜田弁護士は「昭和シェル株の取得は今の株価では600億円程度の含み損で経営の重荷となりかねない。事態を早期収束させるために取らざるをえない手段だ」と正当性を主張した。
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