コスモ石油に灯る「財務制限」抵触の黄信号 最大約300億円の繰り上げ返済が眼前に迫る
コスモ石油を傘下に持つコスモエネルギーホールディングス(HD)が窮地に立たされている。金融機関から融資を受けた際に取り決めた「財務制限条項(コベナンツ)」に抵触寸前で、借入金の繰り上げ返済を迫られかねない状況にあるのだ。
原油価格の暴落により、石油元売り各社は在庫評価損や上流事業の減損で、巨額の損失を計上。コスモだけにとどまらず、JXホールディングス、出光興産が2016年3月期業績の下方修正を発表しており、2期連続で最終赤字となる見通しである。
中でもコスモの財務悪化は深刻だ。同社は、2011年の東日本大震災の際のLPG(液化石油ガス)タンク爆発と、翌年のアスファルト漏洩という2度の事故で、千葉製油所の稼働がたびたび停止。修繕費用も重荷となり、業績悪化に陥った。ここに近年の原油価格暴落が重なり、純資産は2015年12月末で1578億円まで減少した。
純資産1989億円の維持が必達目標
コスモが抱える長期・短期の借入金の総額は約7700億円。このうち、約1009億円がコベナンツ付きの融資となっている。複数ある条項の中でも厳しいのが「純資産を1989億円以上に維持すること」というものだ。
現在の純資産の水準のまま3月末を迎えれば、コベナンツへの抵触は必至。最大で約300億円の繰り上げ返済を迫られ、資金繰りの悪化につながるおそれがある。
コスモも無策ではない。2015年11月には、子会社が保有する製油所跡地について、2016年1月付でコスモエネルギーHDが購入すると明らかにした。狙いは繰延税金負債の取り崩しにある。
この跡地は土地再評価法の適用により、2002年に含み益が発現。税金の未払い分として約200億円の繰延税金負債を計上していた。今回、完全親子会社間の土地売買で今期末に約180億円の繰延税金負債を取り崩し、税負担を軽減。その分、純資産を積み増す算段だった。
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