出光"内紛"激化で高まる経営統合破談の不安 創業家が「自腹」で株購入、奇策で統合阻む

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創業家が出光の現経営陣に送った書簡。合併に反対する理由などを訴えた(撮影:今井康一)

解決をより困難にしているのは、昭和シェル株を取得した創業家側が「インサイダー取引規制に抵触する」ことを理由に、現在、会社側と連絡を一切絶っていること。次回協議の要請に応じない一方で、8月3日と9日に立て続けに、出光の社外・社内取締役に書簡を送付。「なぜこのような状況に至ったのか」、事の経緯と月岡社長の責任を明確化するよう呼びかけた。

これには、今まで大株主かつ元社長でもある創業家に配慮してきた経営陣も、我慢ならなかったようだ。

この8月15日には関大輔副社長らが急きょ会見し、「2014年秋から継続的に昭介氏と話し、2015年7月には統合の了承を事前に取り付けていた」と応酬。さらには、2015年12月17日に昭介氏が「あなた限りにしてください」と月岡社長に手渡した、書面の一部まで明らかにしたのだ。そこに「(出光家は)合併により特別決議が否決できなくなる」「出光興産に取締役1名を出光家から参加させることを要望する」と具体的に要求していたのを公にしたのである。

従来、創業家側は出光の大家族主義を矜持とし、「統合そのものに反対で条件闘争ではない」(浜田弁護士)としてきた。だが少なくとも当初は、出光家の影響力低下や、出光の社員でもある昭介氏の子息二人の行く末を憂慮していたことが、浮き彫りになった。

9月の昭和シェル株取得が第一の関門

空中戦が続く両者に事態打開の展望はあるのか。

会社側はTOBを否定。金融庁などに向けて創業家の手法に法的な裏付けがあるか確認したうえで、シェルとの株式譲渡の契約変更は可能かどうか協議することが考えられる。取得比率を33.24%から引き下げ、3分の1ルールへの抵触を回避する対策だ。

創業家側は「チキンレースのような手には出てほしくない」(第一中央法律事務所の神部健一弁護士)と、昭介氏によるさらなる昭和シェル株取得を示唆するが、会社側が本格的に動けば、個人資産で対抗するのは容易でない。

が、仮に9月中の昭和シェル株取得を乗り切っても、合併するにはもう一つ高い壁がある。創業家は出光株について合計33.92%を保有と主張。3分の1以上の“拒否権”を盾に、年内予定の臨時株主総会の合併決議で、反対票を投じるのは確実だからだ。

8月16日に会社側が再送した協議呼びかけの書簡は翌日付き返された。統合の行方は大きな袋小路に入った。

秦 卓弥 東洋経済 記者

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はた たくや / Takuya Hata

流通、石油、総合商社などの産業担当記者を経て、2016年から『週刊東洋経済』編集部。「ザ・商社 次の一手」、「中国VS.日本 50番勝負」などの大型特集を手掛ける。19年から『会社四季報 プロ500』副編集長。21年から再び『週刊東洋経済』編集部。24年から8年振りの記者職に復帰、現在は自動車・重工業界を担当。アジア、マーケット、エネルギーに関心。

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