村上世彰元代表を強制調査、相場操縦の疑い──。11月25日夕。物言う株主・村上氏の関係先に、証券取引等監視委員会(SESC)が強制調査に入った。マスメディアはこの件を、刑事告発を視野に入れた調査として、一斉に報じた。
村上氏は旧通商産業省(現経済産業省)を退職後、1999年に「村上ファンド」を設立。上場企業の株を大量に取得し、非効率な経営姿勢を批判する一方で、配当の大幅引き上げを求めるなど、注目を集めた。が、2006年にニッポン放送株をめぐるインサイダー取引事件で逮捕・起訴され、2011年には懲役2年・執行猶予3年の有罪判決が確定。2014年6月に猶予期間が満了して以降、再び株式市場で活動を活発化させている。
今回の強制調査について、コーポレートガバナンスに詳しい、山口利昭弁護士に聞いた。
カラ売り=悪質なのか
──報道を見るかぎり、TSIホールディングス株について「カラ売りをかけて値下がりしたところで買い戻すこと」が“悪質”であり、それが「相場操縦」に当たり、SESCは刑事告発を視野に実態解明を進める、とある。
その書き方だと、刑事事件化=逮捕が確実だと、勘違いする人がいてもおかしくない。でも現段階ではまったくわからない。というのも、強制調査としか報じられておらず、それが刑事告発を前提とする特別調査課によるものだったのか、課徴金処分を前提とする取引調査課によるものだったのか、不明だからだ。
──特別調査課と取引調査課はどう違うのか。
特別調査課ならば、令状を取るし、令状が取れるということは、ある程度の証拠をすでにつかんでいる、ということになる。一方、取引調査課には、令状は取れない。ただし、取引調査課にも強制調査権限があり、質問への対応や書類の提出を拒絶すれば罰則が適用されるという、間接強制の形になっている。
SESCとしてはどちらも強制調査と呼んでいるので、報道では村上氏が任意の事情聴取に応じたとあるが、強制調査に伴う事情聴取の可能性もある。さらに、今回の調査が取引調査課によるものだった場合に、すでにある程度の証拠をつかんでいるか、それともこれから探すのかが、わからない。
──相場操縦に当たる取引かどうか、何をもって決まってくるのか。
それが取引誘引目的なのかどうか。つまり、一般の投資家が相場の流れを誤解して行動するように仕向ける目的があったかどうか、だ。
──それは人の心の中の問題だ。どのようにして立証するのか。
株は安く買って高く売るのが基本。なのに、わざわざ高値で買い注文を出す、安値で売り注文を出すといった、経済合理性に反する行為など、いくつかの要素を絡めることになる。が、なにしろ主観の部分だから、客観的な行動から推認するしかあるまい。
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