株主重視を鮮明化、「ファナック豹変」の深層 富士山麓の本拠で起きている変化とは?
ファナックの株価はグイグイ上がり、時価総額が6兆円を超えた。きっかけは3月13日付の日本経済新聞のインタビューだった。稲葉善治社長が、株主との対話を重視すること、さらに株主還元を強化する意向も示したからだ。株価は当日、取引中に前日比で15%も上昇した。
3月24日には、「広く国内外の株主の皆さまとの建設的な対話を促進するための所管部署」として、SR(シェアホルダー・リレーションズ)部を4月1日付けで設置することを正式に発表。これまで情報開示には消極的だっただけに、株主重視は方針の大転換だ。
先立つ2月上旬に明るみに出たのが、物言う株主として知られる、米投資ファンド、サードポイントによるファナック株の取得だった。無借金のうえ、1兆円近いキャッシュの活用策として自社株買いを要求されたことで、市場の注目度ががぜん高まっていた。
きっかけは国の方針
ただ、「株主還元の強化は多くの機関投資家が水面下で求めてきたはず。サードポイントが大げさに言っただけ」(アナリスト)と評されるように、ファンドがファナックの“豹変”を演出したとするのは、極めて一面的な見方だ。
機械業界を担当する複数のアナリストは、きっかけは3月5日に原案が示された「コーポレートガバナンス(企業統治)・コード」と口をそろえる。金融庁や東京証券取引所が今年6月から上場企業に適用する基本原則で、株主との対話の充実や積極的な情報開示を促し、持続的な成長や企業価値の向上を図るもの。政府の成長戦略に盛り込まれ、今回の策定に至った。
情報開示という観点から見ると、日本証券アナリスト協会が公表するディスクロージャー評価において、ファナックの評価の低さは際立つ。2014年度には機械部門20社の中だけでなく、全部門の主要上場企業の中でも「最下位」。どこよりも“お上”の方針を強く意識すべき状態にあったといえる。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら