株主重視を鮮明化、「ファナック豹変」の深層 富士山麓の本拠で起きている変化とは?
投資家向けの情報開示の変化は、2014年から少しずつ表れてはいた。2月ごろからアナリスト向けの工場見学会を開き、4月の決算発表では3年ぶりに決算参考資料として、決算短信以外の資料公表を再開している。
それどころか、今は会社が大変革期にある。契機は、現社長の父でファナックを営業利益率4割という高収益企業へ導いた、稲葉清右衛門名誉会長の引退だった。異変が起きたのは2013年10月。清右衛門氏は、当時務めていた、複数の本部長職や子会社の会長職を軒並み退いた。その後、堰を切ったように、経営体制の刷新が行われていった。
経営陣の意思決定のプロセスにも大きな変化があった。ファナック幹部によれば、「以前の役員会は名誉会長の顔色をうかがってばかり。今はコンセンサスが取れるよう社長が気を配り、活発な議論が行われている」という。現場社員からは「ここ10年ほど滞っていたことを、この1~2年でこなそうとしている」という声も聞かれる。
国内で1300億円の大胆投資
その一つが、過去に例を見ない国内の大胆投資だ。工作機械の精密制御を担う主力製品、NC(数値制御)装置を増産すべく、栃木県に70万平方メートルもの広大な産業用地を取得し、新工場を建設する計画を2014年9月にブチ上げた。
当初は約500億円を投じる計画だったが、今年2月になって計画を変更し、投資額は土地と建屋を合わせて約1000億円に倍増。それだけでなく、約300億円をかけて、山梨本社に研究所4棟を新設する計画も追加された。
NC装置は今後、中国やインドなど新興国で生産自動化が進む中で、需要の増加が確実。加えて、“社内需要”もある。産業用ロボットや小型工作機械といった現在好調な自社製品にも、NC装置が組み込まれており、生産能力の逼迫は必至だった。
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