ファナック“大異変”、カリスマついに引退 ベールに包まれた超優良企業で、創業以来の変化

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イスに座る稲葉清右衛門名誉会長と横に立つ息子の善治社長(写真はファナックホームページより)

売上高は約5000億円で営業利益率約4割、自己資本比率は90%で借金はゼロ。超がつく高収益・好財務のファナック。工作機械の動作をコントロールするNC(数値制御)装置は世界シェアトップだ。

しかし、同社は決算短信や有価証券報告書(有報)など、上場企業として必要最低限の情報開示しか行わず、経営トップが取材を受けるのもほぼ皆無。富士山麓に拠点を構える“黄色い王国”の実態はベールに包まれている。

そのファナックで今、創業以来の大異変が起きている。

発端は今年10月15日に発表された役員人事だった。3人の副社長が就任し、稲葉善治社長だけが有していた代表権が副社長にも付与された。

対外発表はこれだけだが、重大な変化は、善治の父で、ファナックを世界的企業に育て上げた相談役名誉会長の稲葉清右衛門(88)が突如、実権を失っていることだ。

子会社の取締役を”解任”されていた

まず、役員人事と同時に行われた組織変更で、清右衛門が務めていた研究本部長と経営本部長の役職がなくなった。そして、「これまですべての人事異動の決裁印が名誉会長のものだったのが、10月15日を境に社長のものになった」(ファナック社員)。

有報には、「国内外の主要な子会社の会長は、全て名誉会長が兼務しており、会長のみがそれらの子会社の代表権を有している」とある。ところが、法人登記簿謄本で確認すると、10月16日以降、清右衛門は連結子会社を含めて、ファナックと名がつく国内7社の代表を退いている。

重要なポイントは、7社すべての登記簿上で清右衛門は取締役を「解任」と記されていることだ。任期満了で退いたのならば「退任」となり、清右衛門が自ら辞めたのであれば「辞任」と記載される。

今回の「解任」とは、取締役を辞めさせられたことを意味しており、ここから清右衛門の実質支配を排除したいという会社の意図がうかがえる。ファナックと取引のあるメーカー幹部は、「海外子会社の代表も退任したと聞いている」と話す。

子会社の取締役解任について、広報部は「回答は差し控えたい」とするのみ。今も相談役名誉会長の座から離れてはいないが、経営の第一線からは引退したとみられる。

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