ファナック、取締役削減で目指すこととは? 2013年の大異変を経て新体制が本格始動

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山梨の奥地にたたずむ”黄色い”会社の新体制が始まる。

株式時価総額4兆円、工作機械の数値制御(NC)装置では世界トップシェアを誇るファナック。株主総会の招集通知から、取締役の人数を大幅に減らすことが明らかになった。

総会の議案は、現在の取締役18人のうち、3分の1にあたる6人を減らして12人にするというもの。招集通知にはその理由について、「より機動的に経営上の意思決定を行うため」と説明している。

06年と今回の大きな違い

過去に取締役の大幅な減員を行ったのは2006年で、27人から一気に15人へと半分近く減らした。この時、取締役会のスリム化とあわせて「常務役員」も新設している。ニュースリリースには「取締役会により決定された経営方針、経営戦略に従い、各部門の業務執行に専念する」とあり、多くの企業が導入している執行役員制度に相当するものだった。

当時、経営体制に関する重要な変更がもうひとつあった。名誉会長以下、社長、会長、専務などから構成する「経営会議」の設置だ。業務上の重要事項は担当役員を通じて上程され、経営会議で審議されることになった。ポイントは、2000年に取締役を退いたファナックの実質創業者である稲葉清右衛門名誉会長が、この経営会議のメンバーに入ったことだ。

こうして名誉会長が”トップ”として君臨し続ける中、昨年10月に大異変が起きた。組織変更に伴って名誉会長が務めていた研究本部長と経営本部長の役職がなくなり、人事の決済印は名誉会長から社長のものに切り替わった。また、連結子会社をはじめとするファナックと名がつく国内7社の代表取締役を解任されるなど、名誉会長は突如、実権を失った(関連記事「ファナック”大異変”、カリスマついに引退」)。

06年の体制変更では名誉会長が経営の中枢に腰を据え、14年の体制変更前には名誉会長が実権を失った。これが前回と今回の決定的な違いだ。

株主総会という節目

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イスに座っているのが稲葉清右衛門名誉会長。後ろに立つのが稲葉善治社長(写真はファナックのホームページより)

今回の取締役会のスリム化に伴い、06年のようなほかの体制変更も行われているか。現在の常務役員制度や経営会議の有無について会社側に聞くと、「公表していない」(広報部)というのみ。

いずれにしても今回の役員数削減は、名誉会長ではなく、息子である稲葉善治社長の判断で行われたものと見ていい。ファナック関係者は、「(取締役の減員は)多くの企業が進めてきた意思決定の迅速化に、遅まきながらファナックも手をつけたということ」と話す。

6月27日に山梨県忍野村の本社で開催される株主総会は、名誉会長が”引退”してから、初めて経営陣と株主が顔を合わせる公の場だ。それだけに、決議事項のひとつである「取締役12名選任の件」は、大きな意味を持つ。総会を経て、ファナックは本格的に新体制に移行する。

ただ、名誉会長の力がファナックをここまでの世界的な大企業に引き上げてきたことも事実だ。新たな経営体制で、営業利益率4割という高収益と成長を持続することができるのか。今後、よりいっそう社長の経営手腕が問われそうだ。

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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