旭化成建材、63万円インサイダー摘発の深謀 上場グループ社員の株取引を規制強化か?

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一部が傾いた横浜のマンション。国土交通省は工事にかかわった会社に行政処分を下した(撮影:今井康一)

3月7日。証券取引等監視委員会(以下、監視委員会)は、旭化成の子会社・旭化成建材の社員がインサイダー取引をしたとして、課徴金の納付命令を出すようにと内閣総理大臣と金融庁長官に勧告した。

監視委員会によれば、2015年10月、この社員は旭化成建材が施工した杭工事にデータの転用・加筆があったことを打合せの場で知った。この社員は、旭化成の株を当時8000株保有しており、うち3000株を同年10月7日と同9日に売却した。

翌週の14日午前10時半。親会社の旭化成はデータ転用・加筆の事実を開示した。前日13日の終値は930円、当日は13円しか下げなかったが、翌日には125円も下げた。20日には一時700円台を割り込むなど、データ転用・加筆の株価への影響は小さくなかった。

この社員は神奈川県在住の50歳代男性だという。現在も旭化成建材の社員かどうかなど「今現在の立場は把握していない」(監視委員会)。少なくとも、当時、工事担当者ではなかった。

そもそも「インサイダー取引」だったのか?

本件には不明な点が多い。なぜ保有していた8000株のうち3000株のみを売り、5000株は売らなかったのか。監視委員会も「はっきりしたことはわからない」としている。

その後、旭化成の株価は再び下げたが、足元では1000円台まで上昇している。この男性は3000株を売ることで損失を当時回避した。回避した損失は27万円だという。今回の課徴金額は63万円だから、結局、差し引き36万円の損をしたことになる。

後から見れば、600円台の底値をつけた2016年前半に買い戻せば、同年末には1000円台に乗せていることから、短期で相当な値上がり益を得ることができたはずだが、男性が旭化成株を買い戻した形跡はないという。

謎はほかにもある。そもそも、この男性には「インサイダー取引に当たる」という認識が当時あったのだろうか、という点だ。

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