親日都市マカオで見た、日本とコラボの可能性

異文化の交差点で見つけた、ブランドの現地化戦略

中国の一般大衆の反日感情は国家の指導を反映したものですが、それ以前の問題として、圧倒的に「日本を知らない」人たちが多いと思います。都市部の高学歴層を除けば、普通の人々は日本への関心が薄く、日本について知っているのは「桜と富士山」だけだったりします。江戸時代の外国人の日本イメージと大差ありません。あとは、昔中国でテレビ放送されていた山口百恵のドラマ、一休さんやクレヨンしんちゃんなどのアニメなど、情報源は極めて限られています。これでは日本に親近感を持ってくれというほうが無理でしょう。

また、中国は広大で、例えて言えばEUみたいなものですから、国家的な建前は全国同じでも、場所によって価値観はそうとう異なります。日本企業は、親日度合いの比較的高い省や都市を戦略的に選んでお付き合いしたほうがいいと思います。

今回のセミナーでは、マカオ市政府・文化産業委員会の皆さんや、実施運営を担った「业余进修中心」にたいへんお世話になりました。皆さん、穏やかで心優しい人たちで、ハワイの知人たちと似た雰囲気を感じました。グローバル文化と経済の交差点としての歴史を踏まえてさらに成長するマカオと、ビジネスだけでなく文化や人的レベルの交流を深めていきたいとの思いを強くしました。

バービー人形 vs. リカちゃん人形

今回のセミナーでは、マカオ自体のブランド再活性化を念頭に、事業発展やマーケティングの武器としてのブランドから、社会とのビジョン共有のシンボルへと急激に変わりゆくブランドの役割やグローバル展開の方法論などについてお話しました。

グローバルオーディエンスに向けて、ブランドアイデンティティの一貫性とマーケティングの現地化のバランスを説明する際に、私がよく例に使うのが「バービー人形」です。企画・製造元のMattel社はバービー事業をグローバル展開していますが、特にアメリカと異なる価値観を持つ市場では、つねに文化的摩擦を引き起こします。イスラム圏ではそもそも肌を露出したファッションをまとった人形は受け入れられません。中国でも、アメリカ文化の象徴ともいうべき、大人びた雰囲気のバービー人形は人気がないようで、上海にあったフラッグシップショップは2011年3月、閉鎖に追い込まれました。

セミナーの中で私がやっているのが、「バービーvs.リカちゃん」テストです。バービー人形とリカちゃん人形の写真をスクリーンに映して、「もしあなたに小さな女のお子さんがいたら、どちらを買ってあげたいですか?」と聞くのです。アメリカではバービー派が大多数ですが、アジアではまったく逆。タイでやると必ずリカちゃんの圧勝です。「かわいい。欲しい。」という声が上がります。中国各地で講演する際に聞いても、やはりリカちゃんの圧勝です。同じアメリカでもハワイに持っていくとちょっと反応が変わります。6月20日、北京電通を訪れたハワイ大学E-MBAコースのハワイの若手ビジネスピープルの間では、意見が分かれました。東洋系の人形にシンパシーを感じる人たちが半数ほどいたのです。

もし海外市場で本気でバービー人形を売りたければ、現地の女の子やお母さんの嗜好に合わせて顔やファッションをローカライズするしかありません。しかし、そうすると結果として全然バービーに見えないバービー人形になってしまいます。「バービー」ブランドの根幹が揺らぎます。

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