親日都市マカオで見た、日本とコラボの可能性 異文化の交差点で見つけた、ブランドの現地化戦略

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世界にあるマクドナルドの珍メニュー

グローバルブランド成功の前提条件は、各国・各市場での事業の成功です。特に文化・嗜好性の強いカテゴリーに関しては、現地の人々の好みに合わせた、商品やメニューのローカライゼーションが必須です。

たとえばドイツのマクドナルドにはソーセージバーガーがありますし、ビールの販売も行っています。インドに行けば、ビーフを食べないヒンズー教徒のためにビッグマックの代わりに「チキン・マハラジャマックバーガー」を売っています。中国でもメニューの現地化が盛んで、今年6月10日には本格的な米飯メニューの導入が発表されました。「烤汁牛肉麦趣饭」「秘制鸡腿麦趣饭」の名称で、お皿にご飯と一緒にビーフやチキンが盛られたメニューが提供されています。

こうなってくると、「マクドナルドは元来、街のハンバーガー屋さんなのだから、こんな無茶なメニュー展開をしていたら、マクドナルドブランドの核心価値や一貫性が損なわれ、長期的にブランド資産を育成することが難しくなるのではないか」という疑問が出てきます。しかし、マクドナルドの事業とブランドの社内的定義は「Favorite place and way to eat」です。彼らは自分たちの仕事を「ハンバーガービジネス」とは規定していません。子供たち、ファミリー、若者、心若き大人たちのために「大好きな場所と食べ方」を提供することが、時間と空間を超えて一貫するマクドナルドの事業の核心であり、ブランドの価値であり、存在意義そのものだと考えています。

ビーフハンバーガーは主要メニューのひとつにすぎません。日本でも月見バーガーや照り焼きバーガーのような現地化商品が導入されてきました。上記のブランド定義は社内的な規定なので表には出てきません。広告ではグローバル一貫して「I’m lovin’ it」をスローガンとして使用しています。ブランドのビジョンと核心価値を堅持しながら、マーケティングは現地ニーズに合わせて柔軟に行う。以前マクドナルドのグローバルCMOだったLarry Lightの言葉を借りれば、「Freedom within framework」というこの手法こそ、最も現実的なブランドのグローバル戦略だと思います。

岡崎 茂生 フロンテッジ ソリューション本部副本部長

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おかざき しげお / Shigeo Okazaki

1981年東京大学教育学部卒業、1989年ピッツバーグ大学経営大学院MBA。1982年電通入社、2006年より北京駐在。北京電通 ブランド・クリエーション・センター本部長を経て、現職。30年におよぶ広告・マーケティング領域での経験をベースに、中国企業をはじめタイ、アメリカ、韓国、日本企業などを対象に幅広くブランド戦略コンサルティングを行なう。アジア各国およびアメリカの大学/大学院でのブランド講座・公開セミナー、フォーラムでのスピーチ、雑誌連載など多数。チュラロンコン大学商学部マーケティング学科客員准教授、南京大学ジャーナリズム&コミュニケーション学院客員教授、湖南大学ジャーナリズム・コミュニケーション&映像芸術学院客員教授。

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