異常気象?「観測史上初」が続発するカラクリ 日本では年間約50件の史上初を観測

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では、2016年8月の北海道への台風上陸についてはどうでしょうか。台風の進路が普段と違うのには、大きく2つの原因がありました。1つは台風発生の場所が普段と違ったこと。そして、もう1つは、台風の進路を左右する太平洋高気圧の位置が普段と違ったことです。これらは、偏西風が大きく蛇行したことによって起こりました。

台風は通常、フィリピン付近で発生し、まずは北西に進みますが、台風が中緯度まで達すると進路を変え、偏西風に乗って北東に進みます。しかし、2016年の夏は偏西風の蛇行の影響で、普段よりも東の海域で台風ができました。さらに、太平洋高気圧の位置は普段よりも北東にあったため、台風は北西には進まず北に進んで、北海道を直撃したのです。

沖縄・奄美大島でまさかの積雪を観測

それでは、2016年11月に関東地方に降った雪についてはどうでしょうか。気象庁によると、この雪の主原因は偏西風の蛇行とのことです。毎年、秋から冬にかけて、シベリア付近には、寒気の塊であるシベリア高気圧が地上付近に居座ります。そこに、偏西風が大きく蛇行することで、上空にできる「ブロッキング高気圧」と呼ばれる高気圧が発生すると、シベリア高気圧が強まるのです。

2016年の11月24日に関東地方で雪が降る数日前には、このような仕組みでシベリア高気圧が強まっていました。高気圧の周辺は時計回りに風が吹いているため、シベリア高気圧が蓄えている寒気は、日本付近に流れ込みやすくなります。そして、24日にはたまたま日本の南岸を低気圧が通過したので、低気圧がシベリアの寒気をさらに南に引き寄せて、季節外れの雪が降ったわけです。

2016年の1月に沖縄・奄美地方で雪が降ったのも同様の仕組みです。シベリア高気圧の勢力が非常に強かったうえ、高気圧からの寒気が吹き付ける場所が西日本付近だったので、普段は雪の降らない沖縄・奄美地方や台湾で雪が観測されたのです。

シベリア高気圧が強まる現象は通常、ひと冬に何度か起きるので、たいして珍しいことではありません。ただ、たまたま11月に雪が降ったり、普段は雪の降らない地方で降ったりしたから、あたかも異常気象のように感じてしまったというのが真相のようです。

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