異常気象?「観測史上初」が続発するカラクリ 日本では年間約50件の史上初を観測

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さて、2016年のおかしな天気の原因ははっきりしましたが、「観測史上初」「統計史上初」が年間でどれくらい発生したのかも気になります。気象庁に問い合わせてみたところ、「年間50件であれば、さほど多いとはいえない」とのこと。50件!? とんでもない多さのように聞こえます。

実は、気象庁の定義する「観測史上初」とは、その観測所で観測を開始して初めて出た観測値のことをいいます。日本にはアメダスなどの観測所が全国で約1300カ所ありますし、観測項目も最高気温、最低気温だけではなく、雨量や積雪深など、たくさんあります。

異常気象と考えるのは早計?

また、「統計史上初」という言葉とは、その観測所での観測値を人が集計し、記録として残っている「統計値」の中で「初」という意味です。たとえば、雨量計があれば雨が降ったかどうかは、そのときに何ミリメートルの雨が降ったのかがわかります。これが観測値です。しかし、雨が降り続いた期間や、ある期間内に降った雨量の合計値は、観測値を人の手で集計する必要があります。ほかにも、初雪が観測された日や、月間で雷が発生した回数、1カ月間の平均気温なども統計値となります。アメダスや観測項目の数だけ「観測史上初」があるのですから、統計史上初の値もかなり多くなることがおわかりでしょうか。

念のため、最大1時間降水量と最大24時間降水量のそれぞれについて、2016年に記録を更新した観測点はいくつあったかを気象庁観測部にカウントしてもらったところ、2016年12月25日の時点で「最大1時間降水量は68件、最大24時間降水量は19件」ということでした。

「観測史上初」「統計史上初」の数が年々増えているのかどうかも気になりますよね。こちらも気象庁に問い合わせたのですが、「何地点で記録を更新したかという統計を気象庁では行っていないので、推移についてお答えすることはできません」とのことでした。

少なくとも、「観測史上初」「統計史上初」という言葉をやたらと耳にしても、「最近なんだか天気がおかしくなってきている」と結論づけるのは早計だということはわかりました。ただ、自分の住んでいる近くの地点でこのような言葉が出てくれば、今までにない気象災害が起きる可能性はあるので、油断してもよいわけでもありません。

気象庁には、各地の「観測史上初」を調べられるページがあります。もし、今まで経験したことのないような大雨や大雪が降っているときなどは、一度観測値を調べてみると、大きな災害が起こりそうかどうかもある程度予測がつくのではないでしょうか。

今井 明子 気象予報士・サイエンスライター

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いまい あきこ / Akiko Imai

2001年京都大学農学部卒。酒メーカー商品企画部、印刷会社営業職、編集プロダクションを経て、2012年からフリーに。子ども向けや一般向けにわかりやすく科学を解説する書籍や記事を多数執筆。著書に『気象の図鑑』(共著、技術評論社)、『異常気象と温暖化がわかる』(技術評論社)がある。ほか、医療・健康、教育、旅行分野も得意。気象予報士として、お天気教室や防災講座の講師も務める。

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