日本政府が次に取ったのは、日米間の貿易不均衡など経済・通商問題は、首脳間のテーマとはせず、ペンス副大統領と麻生財務相との「日米経済対話」での協議事項とするという戦略だった。トランプ大統領の暴言を封じ込めるという狙いもあった。この構想は、経済政策を担う政権の陣容も具体的政策も固まっていない米国側にとっても都合がよかったようですんなり受け入れられた。その結果、首脳会談で二人が対立する可能性は消えた。
トランプ大統領は政治や外交の経験がない。安倍首相と長い時間を一緒に過ごしたトランプ氏は、主要国7カ国首脳会議(G7サミット)など国際会議の様子や、ロシアのプーチン大統領をはじめ世界各国の首脳についての人物月旦(じんぶつげったん)を聞くなど、情報収集に熱心だったという。在任期間が長い安倍首相の経験知が外交資産となったわけだ。ということで今回の首脳会談では日本側の「抱きつき作戦」が、少なくとも短期的にはうまくいったといえるだろう。
関係が磐石とは言えないワケ
だからといって、今後も安定的な関係を維持できる保証はない。
その理由は、まず、多くの政権幹部が伝統的米国政治のアウトサイダーであり、経験の少ない人たちであること、さらに閣僚をはじめ主要ポストの人事が決まっていないため主要政策が固まっていない、あるいは一度打ち出された政策が揺れ動いていることである。
日米間の経済対話はこれからである。また対中政策や対ロ政策などが今後、どういう方向に向かうのかによっては日本に直接的な影響が及ぶ可能性もある。
重要政策がどのような過程で決められていくのかも不透明だ。ホワイトハウス内の大統領補佐官らとマティス国防長官、ティラーソン国務長官ら主要閣僚との力関係、大統領との距離が重要な要素となってくる。米政権では過去、政策などをめぐって幹部が対立するなどの権力闘争は日常茶飯事で、その結果、大統領補佐官や閣僚がしばしば辞任する。フリン大統領補佐官の辞任も例外ではなく、政権中枢が安定しているとはとてもいえない。誰が力を持ち、その人物がどういう政策を打ち出すか、まだまだ不透明な状況だ。
そもそもこれまでの日米関係は、自由や民主主義、市場経済という価値観や国家観を共有してきた。ビジネス感覚で米国にとって利益か否かですべてを割り切るトランプ大統領が価値観や世界観を語ることはない。狭い意味での国益を超えて国際社会が取り組まなければならない環境問題や人権問題などに関心を持たない。そこにトランプ大統領に対する世界各国の不安や懐疑がある。何を言い出すかわからない。気に入らないことがあれば相手が一国の首相であろうと電話を切ってしまう。ゆえに腫れものに触るように接するしかない。
この点は安倍首相も同じであろう。したがって一度の首脳会談がうまくいったからといって、安心して見ていられる政権ではない。もちろん日米関係が盤石となったともいえない。
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