トランプ大統領と安倍首相の蜜月は続くのか 首脳会談は安保重視の伝統手法でしのいだが

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日本側は今回の会談では伝統的な関係の維持に成功した(写真:The New York Times/アフロ)

トランプ大統領が何を言い出すか戦々恐々とした空気の中で行われた日米首脳会談だが、その結果は冷戦時代から続く「伝統的な日米関係」の枠の中に収まるものとなった。具体的にいえば、日米安全保障条約に基づく強固な同盟関係をあらためて確認したうえで、貿易収支の不均衡をはじめとする経済問題など日米両国が直面する個別の問題を協議していく外交関係の確認である。

それは首脳会談後に公表された「共同声明」によく表れている。日本語で2000字余り、うち約3分の2は安全保障問題に費やされており、関心が集まった経済・貿易問題は原則論が盛り込まれただけだった。まず同盟関係を再確認し、ほかの問題は首脳間では話し合わないという日本側の描いたシナリオどおりとなったわけで、その意味では日本側は一安心といったところだろう。

安定した関係が構築できたと判断するのは早計

しかし、トランプ政権は陣容も主要政策も政策決定メカニズムもまだ固まっていない。政権発足から1カ月足らずで国家安全保障担当のフリン大統領補佐官が辞任するなど、中枢での混乱も起きている。今回の首脳会談で安定した関係が構築できたとするのは早計だろう。

共同声明は日米同盟関係が「アジア太平洋地域の平和と繁栄、自由の礎である」という意味づけに始まり、核兵器を含む米国の軍事力を使った日本の防衛に対する米国の関与など基本原則が書かれた。そのうえで日米安保条約第5条が尖閣諸島にも適用されること、国際法に基づく海洋秩序の維持、南シナ海における緊張を高める行為の回避など、中国を意識した文章も盛り込まれている。さらに、北朝鮮の核・ミサイル開発や拉致問題にも言及しており、日本側にしてみると100点満点に近い内容となっている。

そればかりか首脳会談でトランプ大統領は、在日米軍の駐留経費の負担増や日本の自動車輸出、為替政策など大統領選挙中に取り上げていた日本批判を蒸し返すことはなかった。さらに記者会見で「私たちの軍を受け入れてくれている日本国民に感謝したい」と表明したほどだ。

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