反知性社会だからこそ真の「知識人」が必要だ 声の大きい「王様」の好きにさせてはいけない

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なぜ「知の仕事術」が大事なのか(写真:bee / PIXTA)
自分の中に知的な見取り図を作るためにはどうすればいいのか。文学全集を個人編集する碩学(せきがく)の「知のノウハウ」とは。『知の仕事術』を書いた作家・詩人 池澤夏樹氏に詳しく聞いた。

 

──個人編集で『日本文学全集』全30巻を刊行中ですね。

現在24冊まできた。3月、4月、5月に近現代作家による短編集を出し、その後角田光代さんの新訳『源氏物語』3冊が出て終わり。

大変な作業だった。全体の基本方針を決め、この作家の何を採るか、30巻の内容セレクションを大ざっぱにしか確定させないまま始めた。作家の全作品を読み直さなければ選べない。古典については現役作家たちに新たな翻訳を頼み、先の『世界文学全集』では翻訳者に解説をお願いしたが、『日本文学全集』の場合は全巻の解説を自分で書いた。最初の1年は自ら『古事記』の翻訳に勤しみ、一生に一度はちゃんと働いてみようと取り組んだ。

いかに最小限の労力で製品につないでいくか

──頑張る性格なのですか。

もともとは奮励努力が嫌なたち。頑張らないで、いかに手抜きをするか、工夫する。

──確かに、この本は「手抜きのすすめ」のようにも読めます。

とかく整理のための整理になったり、道具のための道具選びになったりして、目的からずれてしまう。最終的には原稿という自分の製品のための素材集めであって、そのための道具であり整理。いかに最小限の労力で製品につないでいくか。仕事の間に物を探す時間を少なくするための整理が過剰になったりする。

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