教育困難校の教師たちは「警察官」化している 中退率減少、治安維持にも貢献

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また事件か、と今日も頭を抱えている教師たちが、教育困難校にはいるかもしれない(写真:freeangle / PIXTA)
「教育困難校」という言葉をご存じだろうか。さまざまな背景や問題を抱えた子どもが集まり、教育活動が成立しない高校のことだ。
大学受験は社会の関心を集めるものの、高校受験は、人生にとっての意味の大きさに反して、あまり注目されていない。しかし、この高校受験こそ、実は人生前半の最大の分岐点という意味を持つものである。
高校という学校段階は、子どもの学力や、家庭環境などの「格差」が改善される場ではなく、加速される場になってしまっているというのが現実だ。本連載では、「教育困難校」の実態について、現場での経験を踏まえ、お伝えしていく。

約8時間、とりあえず学校の中にいることの意義

「教育困難校」の存在意義のひとつに、社会の治安を守るという効果がある。幼い頃からさまざまな理由で学力を伸ばす機会が得られず、また家庭や地域社会での体験が乏しいため興味関心の幅も非常に狭い生徒たちのほとんどは、本音を言えば、これ以上、学校で勉強に苦しめられたくないと思っている。しかし、今の日本社会では「高卒の資格がなければ、まともに就職もできない」と親や周囲に言われて、高校にやってくる。仕方なく進学した彼らが日々繰り広げているカオスな高校生活については、以前に述べた。

このような学校生活が本人にとって役立つかどうかはともかく、社会にとっては大きなプラス面がある。それが、冒頭に挙げた効果である。生徒たちは登校時から下校時まで約8時間、とりあえず学校の中にいる。言葉は悪いが、「教育困難校」では、体力やエネルギー面では人生の最高レベルだが、学習意欲や社会的関心は乏しく、社会の規範や常識もまだ身に付けていない生徒たちを1カ所に収容し、やるべきことを与えている。そのことに、大きな意義があるのだ。

もちろん、途中で学校を抜け出す(彼らの言葉では「ばっくれる」)ことを試みる生徒もいる。そのために、昼休みだけでなく授業と授業の間の休み時間にも、来客のために唯一開錠されている校門で、教員が立ち番をする。特別の行事のときだけでなく、平常授業の日でも校門で教員が立ち番をしている高校を見かけたら、そこは「教育困難校」と思って間違いはない。

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