教育困難校の教師たちは「警察官」化している 中退率減少、治安維持にも貢献
さらに、地域で行われる祭礼や花火大会などでも、「教育困難校」の教員は必ず巡回警備に駆り出される。この慣習も進学校などにはない。授業や部活動、校務に関する本来の仕事に加え、これらの警察官・警備員もどきの仕事を教員はこなさなければならない。
しかも、緊急性、即時性が高いので、本来の仕事がないがしろになりがちなのも当然だろう。「教育困難校」の教員で、自分は「駐在所のお巡りさん」になったのだろうかと、一瞬たりとも思ったことのない者はいないと断言できる。
犯罪組織が接近してくる
「教育困難校」に通う生徒たちが学校に来なくなれば、彼らの多くは1日中アルバイトに精を出すだろう。その一方で、ゲームセンターに入り浸ったり、繁華街をあてもなくふらつく者も多数出現するだろう。1日中、家にこもってゲームに熱中する者も相当数いるであろうことも想像にかたくない。アルバイトに熱中するのであれば社会的に問題はないかもしれないが、それ以外の過ごし方ではおカネ欲しさに恐喝や窃盗などを引き起こす可能性が生じてくる。それ以上に怖いのは、犯罪組織が彼らに近づき、より凶悪な犯罪に引き込んでいくことである。
青少年が起こした犯罪がニュースで報じられると、「無職」という肩書の者がよく登場する。彼らは、おそらく「教育困難校」中退者ではないかと推測する。現代では高校中退者の生きる道は非常に険しい。だからこそ、高校生のためにも、そして、社会の治安のためにも、生徒たちを学校に囲い込み、できるかぎり外に出さないという役割を「教育困難校」は多方面からひそかに期待されているのかもしれない。
実は、学校現場では、高校中退率がピークを迎えた15〜16年ほど前から、「なるべく生徒を中退させないように」というやんわりとした圧力が管理職からかかるようになった。おそらく、文部科学省や教育委員会の意向なのだろう。問題行動や成績不振で規則上は退学処分になるべき生徒も、「高校生活を続けるチャンスを与えてやってください」といった管理職の言葉で、本人が「退学したい」と強く言わないかぎりは高校にいるようになった。また最近は、より自由度の高い通信制や定時制の高校への転学という道を選び、中退という結論を先送りにする生徒も多くなっている。
文部科学省の最新の統計では、2015年度の高校中退率は約1.5%で、最も高かった1996~2001年頃の約2.5%から大幅に減っていることになっている。この数値自体にも疑問を感じるが、それはさておいても、「教育困難校」が進学校や中堅校に比べて圧倒的に中退率が高いことは、高校関係者の間では疑問の余地がない。数値の減少の裏には、「駐在所のお巡りさん」のような仕事をこなし、社会の治安に貢献する「教育困難校」の教員の努力があることを知ってほしいと思う。
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