従順で私にとっては可愛い「巨大犬」だったのだが、近所の人にとっては恐怖の的であった。警察と保健所が調査に来たこともある。珍しいのでTV局から取材に来て飼い主(つまり私)が持て余しているのを見て「ダメ犬」特集に出たこともあった。要はどう猛なのだがメッチャ可愛いのである。
私にとってのロシアの印象とは、このカフカス牧羊犬のようなものだ。まさに私にとっては、このロシア犬「ボス」との13年間もの(ふつうロシアでの寿命は7年)付き合いが、ロシアビジネスの原点になった。ロシア人には叱られるかもしれないが、ロシア人との付き合いは、「ボス」と私の関係に少し似ていると常々思う。つまり、どう猛だが、メッチャカワイイ。カフカス牧羊犬のように継続して交流することこそ、必要だというわけである。
プーチン大統領は真剣だった
さて、まとめよう。私は16日に間近にいたのでわかるが、日露ビジネス対話の会場でプーチン大統領を見ていると、少し疲れている印象だった。だが、それでも彼は、かなりハードな外交日程をこなしていた。真剣だったのである。
プーチン大統領のことをこきおろすのはわからないではないが、彼にとって日本との平和条約は重要ではあるが、「北方領土問題」は平和条約締結後に自然に決まれば良いことだから、急ぐ必要がないのだ。
日露の経済協力についても、日本からの経済支援を「勝ち取る」ことは大事なのだが、ビジネスの成功とは、お互いにWinWinになることだから、大国の立場から言えば「喰い逃げ」などと言われる筋合いはない。だから、私の目からみると、日露両国にとって今回の首脳会談やビジネス対話は成功だったと思っている。
われわれの会社(アドバンストマテリアルズ社)では、ロシア貿易の比率が比較的高いため、私も含め、社員はよくロシアや中央アジアに出張する。繰り返しになるが、ロシアとの取引は(中国との取引と違って)一定の馴染みにならないと、ビジネスがスムーズに進まないことが多いのだ。
だが、逆にいったん友達になると、親類のように深い付き合いになる。ただし、普通の日本人にとっては、ロシア人は第一印象がブスッとしていて、馴染めないケースが多いように思う。
プーチン大統領は今も「日露関係は継続的に発展している」といっているし、日露の貿易が増加傾向にあることも挙げながら、「2国間関係で最も難しい問題の解決のための良い環境ができている」と話している。
ロシアは日本にとっても最も近い外国の一つだ。 日本の資本や技術提供なしに極東経済の発展が難しいことは明らかで、ロシアは実は極東共同開発のテーブルに、北方領土のカードを乗せたくて仕方がないのである。
ロシアの複数の友人に聞いてまわっているが「日本を嫌いなロシア人など滅多にいない。だが、日本人はなぜかロシアを誤解している」とも言っている。こうした誤解を解くためには、双方の交流を進めるしか王道はないように思われる。そのためにも、日本企業が積極的に米ロ関係や欧ロ関係のパイプ役になるくらいの使命感がなければ、日本はアジアのリーダーにはなれないのではないか。
これから日本の民間企業は「No Action Talk Only」を脱することができるだろうか。例えば、日本から一番近い大都市であるウラジオストック(9月の東方経済フォーラムが行われた場所)は、成田から飛行機でたった2時間のところにある。だが、日本人旅行客はなぜか行きたがらない。私自身はこれまでロシアには60回以上の訪問をしているが、ロシア人ほどおおらかで親日的な国民はそうはいない。表面的にはとっつきが悪いから、日本人が誤解しているだけなのである。
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