前回の本稿(あく抜けした「トルコ」は経済回復に向かう)でも述べたが、今回のトルコ出張についても周りの知人や家族から「君子危きに近寄らず。取りやめるか延期した方がいい」と忠告を受けていた。しかし、レアメタルビジネスは「答えは現場にしかない」。「怖いもの見たさ」も手伝って、あえて出張を決行した。
トルコについては、現場の生の情報が大変少ないように思われて仕方がない。7月15日のクーデター未遂から、かなりの時間が経過しているが、日本に伝わっている情報が少なすぎる。
そこで今回は、クーデター後のトルコおよびエルドアン大統領が、内憂外患をどのようにさばいていくか、について書いていく。私なりの「独断と偏見」で快刀乱麻のバランス感覚を予見し、「日本企業はトルコとどのように付き合うべきか」について、その方向性を探りたい。
欧州諸国のジレンマ、死刑制度が焦点に
15日未明に起きたクーデター未遂を受けた措置として、20日までに約5万人の公務員が拘束または解雇されたことがわかった。トルコ政府はクーデターを組織した書類から重要人物を割り出したのだ。これまでに身柄を拘束された人数は約9300人。この中には、クーデターの黒幕として国家反逆の容疑がかけられている将軍や提督118人のほか、兵士、警官、裁判官らが含まれる。
教育省の職員は2万2000人が解雇され、私立教育機関の教員は2万1000人が免許を剥奪された。エルドアン大統領がクーデター未遂を口実に反対派を弾圧しているとの懸念が拡大しており、国際社会からは、トルコ政府による大規模な粛清は法の支配を無視するものだと非難する声が上がっている。
中東問題を鳥瞰(ちょうかん)すると、シリアとイラクの情勢が不安定なので、仮にトルコのクーデターが成功していれば最悪の事態になっていた可能性は否定できない。EUの立場からいえば難民問題が最大の懸念。トルコにいるシリア難民は300万人。トルコの政情が悪化すれば当然ながら欧州に押し寄せていただろう。
過激派組織IS(イスラム国)への対峙も、米国とトルコ陸軍が頼みの綱である。米軍が駐留するトルコ南部インジルリク空軍基地は数日間閉鎖されていたが元の状態に戻った。そのため、これ以上の悪影響は出ないと考えられる。インジルリク空軍基地はISへの掃討作戦の拠点であり、今後のテロ対策にとっては重要な基地である。
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