「強制送還」されていく難民、その悲痛な叫び

EUとトルコの「取引」で欧州への亡命が困難に

ギリシャ当局は4日、難民らをトルコに強制送還する作業を開始した。レスボス島で3日撮影(写真: ロイター/Giorgos Moutafis )

[レスボス島(ギリシャ)5日 ロイター] - シリア難民のアスマさん(17)は有刺鉄線のフェンス越しに、彼女のギリシャへの旅について語ろうとしたが、話をきちんと聞くことはできなかった。ギリシャの警察官がわれわれにぴったり張り付き、立ち去らねば逮捕すると脅したからだ。

彼女はトルコから小さなゴムボートに乗ってやってきた。故郷のダルアーという街で反政府蜂起が起きた際、ビルが崩れて片腕を骨折。包帯を巻いたままだった。ドイツで再起を期したいと語り始めた時、警官は最後の警告をした上で、われわれをモリア収容施設のフェンスの外に連れ出した。

「動物扱い」

「私たちは動物扱いされてる。人間じゃないのよ」。われわれの背中で、アスナの叫び声が響いた。

トルコがまともな生活に向けての混雑した出口なのだとしたら、ギリシャは乗り継ぎができなくなった人々の待合室だ。多くは決して欧州の北部にはたどり着けず、そのほかの人々は引き返すことになるだけだ。

5万2000人強の難民と移民が国内で立ち往生したことで、ギリシャは数カ月前に同国のチプラス首相が、そうなるかもしれないと警告した場所と化してしまった。すなわち「魂の倉庫」だ。

そして欧州連合(EU)とトルコの合意に基づき、ギリシャに不法入国したとされた難民のトルコへの強制送還が、4日の明け方に始まった。トルコに強制送還されるのと同じ数の人々が、トルコ国内の難民キャンプから飛行機でEU各国に運ばれ、合法的に受け入れられる予定だ。

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