「強制送還」されていく難民、その悲痛な叫び EUとトルコの「取引」で欧州への亡命が困難に

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アスマのギリシャ到着が3月だったなら、今頃はドイツにいただろう。3週間前だったなら、ギリシャとマケドニアの国境にある暫定施設に移されていただろう。待遇はあまり改善されなかっただろうが、3000人強の難民が収容されているレスボス島の元軍事基地の施設にいるよりも、外界へのアクセスは広がってはいただろう。 

しかし、EUとトルコの合意が発効した3月21日以降にギリシャに着いた彼女のような難民は、その大半がトルコに送還される。トルコが「安全ではない」と判断したから、彼らは出てきたわけなのだが。

難民受け入れの見返りとしてEUはトルコに最大66億ドル(7260億円)を供与。トルコ人に欧州各国へのビザなし渡航を認め、トルコのEU加盟に関する検討を続けることにした。

当局はこの合意について、欧州への亡命を制限するのではなく、違法な密入国に歯止めをかけるためだと強調している。昨年だけでも100万人以上の難民と移民がトルコから欧州に流入した。

人間のベルトコンベア

しかし、人間のベルトコンベアのような、この「1対1」の合意の内容は複雑で、混乱や懸念、不安を招くことになった。国連の難民支援機関や国境なき医師団、セーブ・ザ・チルドレンといった人道主義組織は、この合意は難民受け入れセンターを非人道的な拘留施設とするものだと抗議して、ギリシャの一部の島で活動を一時停止した。

レスボス島に着いた難民。昨年9月撮影(写真: ロイター/Yannis Behrakis)

合意ではトルコが「安全な」亡命先だとしているが、人権団体はこれに反論。アムネスティ・インターナショナルは、トルコが未成年を含むシリア人を約100人単位でほぼ毎日、違法にシリアへと強制退去させている実情を、EUの首脳部が黙認していると批判している。

6年間に及ぶ金融危機で疲弊したギリシャにとっても、合意に基づく移送は多大な労力を要する。4月後半にはシリア難民のトルコ送還が本格化する見込みだが、制度面の不備が露呈するのは必至。国連関係者によると、レスボス島のモリア収容施設では、2860件強の難民申請に対処できるギリシャの担当者は3人しかいないのだ。

この問題はいつまでも尾を引きそうだ。レスボス島とヒオス島から202人がトルコに送還された4日には、ギリシャの島々には228人の難民が到着した。ベルトコンベアのような人間の流れは続いているのだ。

ギリシャ本土にいる送還対象外の4万6000人あまりの人々も、それぞれの答えを見出せないまま、心身を蝕まれつつある。こうした複雑な人間の入れ替えは、この時代で最悪な人道上の危機を悪化させているだけだ。

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