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欧州の安定が、少なくとも6つの危機によって脅かされている。シリア内戦などの地域的紛争、英国の欧州連合(EU)離脱問題、第2次世界大戦以来の規模の難民急増、未解決の財政問題、ロシアの拡大主義、加えて、政治の表舞台へのナショナリズムの回帰である。
ロシアのプーチン大統領はそうした危機のいくつかを意図的に悪い方向へと誘ってきた。ウクライナからクリミアを奪い、シリアでは軍事介入により中東紛争を激化させ、難民危機を深刻化させた。プーチン氏のこうした脅威に、EUは腰を据えて向き合う必要がある。
極右政党を操るロシア
今欧州を席巻するナショナリズムは、ロシアの各国極右政党に対する資金提供に起因する。極右政党の台頭は、難民問題解決への欧州の一枚岩の対応に水を差している。
たとえば英国では、プーチン支持派の英国独立党の人気に押され、政府は難民受け入れの確約を拒否している。スウェーデンでも極右政党の民主党が急速に支持者を増やしており、国境は閉鎖されたままだ。こうした嘆かわしい意思決定が欧州全体で行われているのだ。
プーチン氏は難民危機の根本的原因であるシリア紛争の政治的解決に向け、国際社会の交渉も妨害している。シリア政府軍は反政府勢力が掌握する都市アレッポを奪還しようと侵攻しているが、ロシアは空爆で政府軍を支援しており、和平プロセスをさらに困難にさせている。
国連によれば2月15日に、女性と子供を含む少なくとも50人が、シリア北部の学校や病院でミサイル攻撃により殺害された。こうした攻撃を「戦争犯罪」と称したフランス政府は全く正しい。ロシアは関与を否定したが、ロシア製ミサイルの破片が現場で発見されている。
さらに、赤十字国際委員会によれば、アレッポ周辺での戦闘でおよそ5万人が家を追われた。こうした窮余のシリア人の多くが、トルコ、そして欧州へと向かうことになる。
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