ロシアのシリア「のめり込み」は止められない なぜ軍事介入をエスカレートさせているのか
ロシアがシリアにのめり込んでいる。規模拡大により戦略爆撃機や巡航ミサイルまでも投入しており、これはすでに大規模な戦争に相当するものだ。内戦対応以上の介入をしており、まさに「のめり込み」という表現がぴったりだ。
24日には戦闘爆撃機をトルコに撃墜されたように、国境線近くまでも爆撃範囲に含めようとしているようである。さらにフランスとの軍事協力を申し出ており、米国との協調も模索している。
なぜロシアはシリアにのめり込むのか
その目的について、報道等ではシリアでの権益確保と観測されている。シリアは旧ソ連の時代からロシアの影響圏であり、しかも中東、地中海世界に残る唯一の友好国だ。その影響力を残すためにロシアは介入した、という見立てだ。
だが、今回の介入の本質は、むしろロシア国内事情を反映したものだ。ロシアは経済、外交、領土問題で行き詰まっており、国民には閉塞感が生まれている。これは「失敗」ということを認められないプーチンの独裁体勢には都合が悪い。このため、シリア介入とロシア軍の活躍により注目を国内問題からそらし、国民にロシア外交・安全保障の勝利を印象付けようとした。そのようにみえるのである。
現在、ロシア経済は不況下にあり改善する見込みはない。この点で国民は不満を持っている。
今年のロシア経済は4%程度のマイナス、来年も0.5%のマイナス成長となる見込みである。これは原油価格下落と西側の経済制裁によるものだ。ここ15年ほど5-10%の経済成長を続けてきたロシア国民には大ショックである。
特に、モノグラードの不況は社会不安となりかねない。モノグラードとは、単一産業に依存する工業都市のことだ。300ほどの都市が該当し、1400万人の労働者と1100万の家族が暮らしている。その不振により雇用不安や賃金下落が広がっており、健康保険ほかの福利厚生、水道や極寒地で必須のセントラル・ヒーティングといった会社提供の諸サービスも危うくなっている。これはプーチン政権での問題といわれている。
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