エルドアンは、なぜ民衆の人気を集めるのか

その実像は「トルコ版の田中角栄」

トルコはかつてハイパーインフレに苦しんだ経験がある。デノミ実施後に経済復興を成し遂げたのはそれほど昔の事ではない。日本にも何度か訪れて安倍首相との蜜月ムードを演出しているだけでなく、インフラ工事を矢継ぎ早に成功させた。ボスポラス海峡横断地下鉄計画(円借款2000億円)は大成建設、通信放送衛星調達計画は三菱電機、イズミット湾横断大橋はIHIと伊藤忠商事、スィノプ原子力発電所は三菱重工業と日本勢の受注も少なくない。

今後も、イスタンブール第3空港、3000メートルの大吊り橋、イスタンブール大運河計画(2023年完成予定)、ボスポラス海底トンネル(2020年完成予定)、第3原子力発電所(未定)アンカラ・イスタンブール高速鉄道計画など大プロジェクトの計画がひしめいている。列島改造論を実現させた故・田中角栄元首相は天才と呼ばれたが、エルドアン大統領はその行動力や手腕からみると大天才と呼ぶべきかもしれない。

平時に戻れば魅力的な駐在地

トルコの経済復興の目玉は外資の導入で、積極的にアプローチしてきた。特に安倍首相との関係は密接で、さすがの安倍首相もエルドアン大統領の術中にはまったと見る向きもある。

投資奨励政策では、法人税は20%の低減税率、社会保障費はトルコ側が補助、支払金利もトルコ側が補助、関税免除、VAT免税、土地の無償供与、所得税控除の補助など投資面でのメリットを推進。日本からは自動車メーカーなど(クボタ、日産自動車、トヨタ自動車、デンソー、ヤマハ)がトルコに進出し、進出企業数は205社(2015年12月)に上る。

日本からの直接投資額も多い。2002~15年までの合計直接投資額は日本企業だけで19億ドル以上。韓国5.57億ドル、中国5.28億ドルに比べると日本企業の進出はかなり積極的である。近年の実績例ではダイキン工業、パナソニック、味の素、日本ハム、GS・YUASAのトルコ企業買収例が際立っている。また、製造拠点の設立例では住友ゴム、日清食品、ホシザキ電機、日清フーズ・丸紅、東洋鋼鈑がある。

前回記事の繰り返しになるが、日本の商社の感覚からすると「地政学的優位性」や「マクロ経済潜在力」や「労働力の質の高さ」を持つトルコへの期待値は、ますます高まると考えている。日本人がサウジアラビアやイランやイラクに駐在することに比べると、トルコにおける生活環境はいろいろな意味で快適である。まして、アフリカ諸国での滞在と比べると、トルコでのQoL(Quality of Life)は、はるかに高いのではないか。

QoLの「幸福」とは、心身の健康、良好な人間関係、やりがいのある仕事、快適な住環境、十分な教育、レクリエーション活動、レジャーなどさまざまな観点から計られる。またQoLには国家の発展、個人の人権・自由が保障されている度合い、住みやすさとの関連性も指摘される。

クーデター事件が解決しテロ活動がなくなれば、トルコほど素晴らしい駐在地はそうそうないのである。アジアの最西端と最東端の両国が協力することで世界の発展に貢献することが出来れば、これに勝る喜びはないと思うのは私だけではないはずだ。

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