ロシアによる「米大統領選干渉」がマズい理由 トランプ勝利に導いた立役者?
2017年1月20日、ドナルド・トランプが第45代米大統領に就任する。トランプ大統領選出は予想を覆す結果であり、米国の現代史において、最も番狂わせな大統領選だったと評されている。しかし彼は独力で勝利したのだろうか。
11月8日の投票前、ほぼすべての世論調査で民主党候補ヒラリー・クリントンの勝利が予測されていた。クリントンが勝利する確率は、ロイターは90%、ハフィントン・ポストは98.2%、ニューヨーク・タイムズ紙は85%と予測していた。投票前日の11月7日には、リアル・クリア・ポリティクスによる世論調査の平均では、クリントンがトランプを3.2%上回っていた。トランプがなぜ、そして、どのようにして大統領選に勝利することができたのかについては、すでに多くの分析がなされているが、今後も研究され、それについての書籍も出版されることは間違いないだろう。
ロシアはやはりハッキングをしていた!
こうした中、選挙から1カ月たった12月9日、米ワシントンポスト紙が「米中央情報局(CIA)は、ロシアが単に米国の選挙システムの信頼を損ねるためだけでなく、トランプ勝利を支援するため2016年の大統領選に干渉したと断定した」とする記事を掲載。ニューヨーク・タイムズ紙も同日、「ロシアは大統領選の後半、クリントンの躍進を妨害し、トランプ支援の裏工作に回った」と報じた。
トランプはこの報道を断固として否定し、同様の分析をした米国のすべての情報機関(CIAを含む17の情報機関)を批判した。これは議会の多くの共和党議員を不安にした。議員たちの中には、この問題に関する独立超党派調査が必要だと考えている人も少なくない。
この件に関して、共和、民主両党が懸念する理由はいくつかある。ひとつは、今回、ロシアが民主党だけでなく、共和党のメールシステムもハッキングしていたとCIAが報告したことだ。つまり、ロシアはウィキリークスを使って民主党のメールを拡散したものの、共和党のメールは拡散しなかったということ。これに対して、ロシア側がクリントンに不利な情報を発することでトランプが大統領になることを助け、トランプが大統領になった暁には彼に不利な情報を握っていると脅すもくろみがあるのではないか、と疑う向きがある。
トランプが国務長官にエクソン・モービルのレックス・ティラーソンCEOを任命したことへの懸念も広がっている。同氏は外交経験がないだけでなく、ウラジーミル・プーチン大統領と親しいことで知られているからだ。2012年にはロシアから「友好勲章」を授与されているほど親ロシアである。
また、今回の調査に関してのトランプ側による機密情報機関に対する批判は、次期大統領は、自分が気に入らない分析や情報を提供する情報機関は信用しない可能性を示唆している。そうなれば、民主党だけでなく、国家安全保障を重要視する共和党員からも反発を買いかねない。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら