ドナルド・トランプ次期大統領の閣僚人事が少しずつ明らかになりつつある。国家安全保障担当補佐官にはマイケル・フリン元国防情報局(DIA)局長、CIA長官にはマイク・ポンペオ下院議員、そして12月1日には湾岸戦争からアフガン、イラク戦争まで中東での実戦経験が豊富なジェームズ・マティス元中央軍司令官が国防長官に指名すると発表した。
閣僚の正式な任命は新大統領の就任と上院の承認を待つことになるが、いずれもイスラム過激派の脅威について警鐘を鳴らし続けてきた中東政策の強硬派だ。この人事は、過激思想の拡大がアメリカの安全保障にとって最大の脅威であり、イラン合意を批判し、イスラム国とは徹底的に戦うと言い続けたトランプの公約に沿ったものである。
テロへの恐怖
トランプ氏の勝利から1カ月。それを後押しした力として、経済のグローバル化から取り残された人々の怒りや苦境があったとされ、筆者は前回の記事で、実業家大統領に期待する中西部の保守的なアメリカ人やリバタリアンの存在について触れた。しかし、ラストベルト(インディアナ州、オハイオ州、ミシガン州などの旧工業地帯)の失業者、共和党の保守主義者だけがトランプ氏を支持をしたわけではない。東西海岸のメディア関係者など高い教育を受けた有権者にも"隠れトランプ支持者"はいた。
彼らの恐れは、グローバル競争にさらされ雇用が奪われることではなく、そこにはもう一つ別の対立軸、恐れがあった。イスラム過激派の台頭とテロへの恐怖である。その恐怖は平和な日本で私たちが想像できる以上にリアルなものだ。
選挙結果が明らかになってまもなく、そうした恐れとこれまでの民主党政権の中東外交への不信感、トランプ候補の強硬姿勢への期待がワシントン・ポスト紙に寄せられ、大きな反響を呼んだ。アスラ・ノマニという元ウォール・ストリート・ジャーナル紙記者の寄稿である。これは"隠れトランプ支持者"のひとつの弁明である。
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