ドナルド・トランプ氏が大統領選直前に強調していた公約のひとつが「オバマケア撤廃」だ。当選直後に現職のオバマ大統領と面談し、あっさりとオバマケアを一部継続すると表明。柔軟姿勢に転じたかのようにもみえた。
しかし、それは誤解だったようだ。11月29日、トランプ氏は保健福祉省長官(日本で言うところの厚生労働大臣)にトム・プライス下院議員を任命することを明らかにした。この人事により、「オバマケア撤廃」の姿勢は再び明確になったと言っていい。
日本ではほとんど無名のプライス氏だが、いったいどのような人物なのだろうか。
プライス氏の医療制度改革案とは?
プライス氏はジョージア州選出の共和党下院議員。下院予算委員長を務めていたため、予算に関する知識にも富んでいる。整形外科医の資格を持ち、医療政策に通じており、この道のエキスパート。共和党の中でもオバマケア撤廃を強く訴えてきた急先鋒だ。トランプ氏はプライス氏を指名した理由について「オバマケアの廃止、修正という選挙公約を実現できる人材」と説明している。おそらく、プライス氏にこの分野を丸投げするだろう。
プライス氏は以前から独自の医療制度改革案を明らかにしている。プライス氏の医療政策案は「Empowering Patients First Act」という名前で知られており、ポイントは以下の5点である。
(1)個人が税控除を使って自分で民間保険を購入する
国民は一律に定められた税控除(tax credit)を受けることができ、その税控除を使って自由市場において個々人が民間保険を購入する。税控除の金額は最低年間1200ドル。年齢が上がるごとに高くなる。税控除には収入による調整はなく、お金持ちも貧困層も一律同じ金額である。
現在、メディケイド(貧困層向けの公的保険)、メディケア(高齢者と身体障害者向けの公的保険)、トライケア(軍の健康保険)、退役軍人用の公的保険などを持っている人達も、税控除を用いて民間保険を購入するように促す。
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