ロシアによる「米大統領選干渉」がマズい理由 トランプ勝利に導いた立役者?

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さて、ここであらためてトランプの勝因について、私なりの分析をしてみたい。

まずひとつには、すでに言われていることだが、米国の有権者が現状に対して予想をはるかに超える不満を抱いており、「変化」を望んでいるということである。オバマ政権下で米国経済は著しく回復したにもかかわらず、有権者は失業率の高さや賃金上昇率の低さ、グローバル化(貿易、移民、テロリズムなどの問題)に対しての不満や、政治の停滞と行き詰まりに対し失望していたのである。

これに対して、トランプは現状を根本的に変えることを約束し、有権者の不満に訴えかけることに成功した。特に、少数派グループ(女性、アフリカ系、ラテン系、アジア系米国人やLGBTなど)の陰で、政治的、経済的特権を「剥奪」されてきたと感じていた、学歴のさほど高くない白人男性で、労働組合の会員であり、過去には民主党に投票していた人々に効果的に訴えかけたといえる。

トランプは、こうした「取り残されている」という不安を抱える白人男性の声を代弁する反体制候補者の代表的存在となった。いくつかの投票区では、これまで投票に行っていなかったが、トランプに感化され今回初めて投票したという有権者が10%近くもいた。

クリントンが期待外れだったワケ

一方、クリントンはウォール街の億万長者たちと親しく、米国民が望むような変化をもたらしてはくれないエリート層を代表する候補者と見えた。クリントンの支持者は、トランプの支持者ほど熱狂的ではなく、女性など少数派グループによる投票率も予想を下回った。

誰もが驚いたのは、同氏が激戦州であるオハイオやペンシルベニアなどで敗戦したことである。特に伝統的に民主党が強いウィスコンシンとミシガンでの敗北は驚きだった。こうした州では、従来民主党に投票していた労働組合の白人男性が、トランプに投票したが、彼らにとっては、女性であることも予想以上に否定的要因だった。

ほぼすべての世論調査による「クリントンの勝利」の予想も、勝利を確信した同氏の支持者らが安心してしまい投票に行かないという結果を招き、同氏に不利に働いた。一方、熱狂的なトランプ支持者は、これとは反対に劣勢を覆すために投票所へ積極的に足を運んだのである。

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