ロシアによる「米大統領選干渉」がマズい理由 トランプ勝利に導いた立役者?
以上4つの要因に加えて、以下の「外部要因」も重要だと考えられる。
まず、共和党支持者のジェームズ・コミー米連邦捜査局(FBI)長官が、投票日をわずか11日後に控えた10月28日、クリントンの「メール事件」に関する再捜査開始という旨の書簡を議会に提出し、クリントン陣営にとって大きな痛手となった。それまでは、クリントンが圧勝し、民主党が上院だけでなく、下院でも過半数を握るであろうとみられていた。
しかし、このFBI長官の書簡により、有権者は再びクリントンに対して疑惑の目を向けるようになった。コミー長官は投票日2日前になって、クリントンを訴追しないと決定したが、これがかえってトランプ支持者を投票所へ足を運ばせる要因となってしまった。ちなみに、FBIによる行為は、選挙に結果を与える可能性のある捜査は、選挙の60日前以降は公表されるべきではないという司法省の決まりに違反している。
総得票数はクリントンのほうが多かった
もうひとつは、前述のロシアによる「関与」だ。ロシアが民主党全国委員会のメンバーや、クリントン陣営の選対本部長ジョン・ポデスタを含む陣営幹部のメールをハッキングし、内部告発サイト「ウィキリークス」で公開し、情報を暴露したことは、クリントンには不利に、トランプには有利に働いた。
ロシア政府はまた、クリントンに関する捏造された「ウソの情報」を拡散した。たとえば、同氏が「パーキンソン病を患っているという事実を隠している」、あるいは、「ローマ法王がトランプ支持を公言した」など、事実とは異なる情報を、フェイスブックやツイッターなどSNSを通じて広く拡散した。
こうした中、今回の選挙ではトランプが306人の選挙人を獲得し勝利したが、クリントンが合計8万4000票未満の僅差で、ペンシルベニア、ミシガン、ウィスコンシンで敗北し46人の選挙人すべてをトランプが獲得した事実を忘れるべきではない。総得票数では、クリントンがトランプを280万票以上、上回ったにもかかわらずだ。
とはいえ、今回の選挙は国内情勢に加え、グローバル化の象徴として、こうした他国による関与が結果を左右したということは認めなければいけない。そして、今後の選挙においては、他国による必要以上の関与を防ぐためには、どうするべきか考えなければいけないだろう。とりわけ、米国はロシアによる干渉をどう制裁し、どう止めるかを考える必要がある。もっとも、結果的にはロシアのおかげで勝利した可能性が高いトランプだけに、ロシアには制裁を加えるというより、恩義を感じていてもおかしくない。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら