「日本人学生の入学もないし、日本企業からの採用希望もありません」。
5年ほど前、インド工科大学(IIT)のある教授が、こう漏らしていた。学生数で世界最大の3億人を超えるインドの頂点を極める同大学でさえ、これまで日本と接することがなかったのだ。しかし、今、変化が起こりつつある。
2年前には、インド工科大学に灘高校(兵庫県)の学生が1人合格、日本人で初入学を果たした。インドで新卒採用を行う日本企業が出始め、それが少しずつ増えてきている。そしてインド人社員が戦力として十分に活躍する企業も徐々に増加しているのだ。
20~30社がインドで新卒採用
「(日本の本社によるインド人学生の新卒採用は)まだまだ少ないですが、確実に増えています」。人材大手パソナのインド法人で10年間近く代表を務めた谷嘉久氏(現パソナのグローバル事業本部副本部長)はそう語る。
インドで新卒採用活動を行う企業数について「おそらく20~30社」という。「数は少ないが、各大学の就職課や学生たちの日本企業に対する反応はいい。日本企業のセールスポイントは日本での採用ということ。優秀な学生は研究所などに勤めることになるので、日本の最先端の技術で仕事ができるという、インセンティブが働く」という。
「大変ではあるが、何とかインドの優秀な大学で新卒採用ができるようだ」という噂は、大手日本企業のグローバル採用担当者の間に少しずつ広まり、欧米企業に遅れながらも採用活動を行う日本企業が徐々に増加している。ソニー、日立製作所、楽天、ヤフー、コニカミノルタ、村田製作所といった企業である。だが、米オラクルや米マイクロソフトのような大量に内定を出す企業の前に、日本企業は苦戦している。
こうした中、欧米のIT大手企業と並び、日本勢で1社気を吐いているのがワークスアプリケーションズ社だ。大手上場企業向けのERP(統合基幹業務システム)パッケージでシェア1位の同社は、人工知能型ERPを販売しており、先端の研究開発に必要なインドの優秀な人材を求め、毎年採用活動をしている。
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