「親孝行」と「犠牲」の境界を親に伝えよう

誰だって親のためには生きられない

母上の場合、家事ができればできる職も多く、働いた経験がないというだけで求職もせずにこれからも過ごすには、まだ若すぎます。東京よりシニアが働きにくい条件の私の地方でさえ、仕事を見つけるのが上手なシニアも少なくありません。朝刊配達と昼は食堂、夜は配送品の仕分けのバイトと掛け持ちしているシニアもいます。

食堂と居酒屋の皿洗いを掛け持ちしているシニアや、75歳で他人の軒先を借りてお弁当屋さんを開業した知人もいます。この方たちは収入と同時に、社会とつながることで、自分の健康や喜びももらっていると言い、前向きな人が多いです。

まして経済的に成り立っていない母上が、収入を得る努力をしないのは、怠慢以外の何ものでもありません。じっと座っていて、仕事が向こうからやってくるわけではありません。最初は職の選り好みをせず、生きるために働くという意識を持ってもらうことが、まず先決です。

扶養者の物心両面の限界を、親子で共有すべし

あなたのこれまでの、恩着せがましくないご両親への貢献で、あなたの現在の不安や不満は、ご両親には伝わっていないと思われます。特に母上は嬉々としておられるそうで、あなたの思いとのギャップが大きすぎます。

母上が多少なりとも収入を得る努力をするなら、あなたが結婚などで転機が訪れるまで同居を継続してよいのか、何が何でも、いったん父親の元に戻ってほしいのか、明確に意思表示しましょう。今のままでは将来に不安があることも、伝えましょう。

そして昔から、「本当に死にたい人は、自分の口で死ぬなどとは言わない。言っている間は大丈夫」と言う人がいるように、これはかなり当てはまる場合が多いです。油断は禁物ですが、あまり父上のその言葉に、即反応しないことです。

そして母上も含めて、自分が金銭的に援助できるのはひと月最高数万円というふうに明示し、両親に経済的に自立する自覚を持ってもらいましょう。

これは確かに、口で言うほど簡単なことではありません。母上が求職したとしても、必ず実現するとも限らず、3人の努力だけで解決しない場合もあります。まず努力したうえで無理だったら、行政に相談するなどして、一人で何もかも背負わなくとも済む方法を探るべきです。

時と場合によっては、子どもの全人生をかけて親の面倒を見る人や、そのようなケースも多々あり、それはそれで敬意を感じます。親孝行と犠牲の境も、考え方や事情によって異なります。

そのうえで申し上げられることはあなたの場合、収入などに鑑み、「親の世話は義務や孝行としてどこまではできる。しかし現状では、自分には重い負担になっている」という事実を、明確に親に伝えるべきです。

健康で若いご両親の努力なしにあなただけが犠牲に耐えても、早晩3人が行き詰まるだけです。心得違いの親の扶養に引っ張られ、親子共倒れにならないよう、断固たる意志を伝えましょう。

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