「親孝行」と「犠牲」の境界を親に伝えよう 誰だって親のためには生きられない

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あなたのご相談文を拝読して、すぐに目に浮かんだ人がいます。寛さんという人ですが、彼は実家から新幹線と在来線を乗り継いで4時間の地方で、念願の観光電車の機関士の卵でした。

そこへ脳梗塞で一人住まいだった母親が倒れたのです。彼は結婚を約束した人もその地にいましたが、緊急対策で会社を休職し、介護のために帰郷しました。「母親が落ち着いたら復職し、彼女と結婚したい」が、口癖でした。

それから20年ほど経っています。幸い母親は小康を保っておられますが、息子の介護なしでは生活できません。彼はもう50歳は過ぎていて、婚約者ともとっくに縁が切れているそうです。

ほかの理由で結婚しないのは仕方がなく、または構わないのです。しかし親の介護が理由で、幼い頃からの夢の仕事も結婚もあきらめた彼は、現状を心から納得しているだろうかと、考えてしまいます。

私は寛さんの母親と親しいのですが、自分が長生きする分だけ息子の人生を奪い続けているようで、申し訳ない気持ちで、時々生きた心地がしないと言っています。親の思いだけで解決する問題ではありませんので、この問題はこれくらいにしておきますが、あなたのご両親は病気ではありません。

あなたの将来について、ご両親がどのように考えておられるのか、是非聞いてみるべきです。

健康なら、シニアも経済的な自立を目指すべき

地方と東京を行き来していますと、その違いもよく目につきます。その1つに東京では、70歳以上の人が、かなり広範囲な分野で、第一線で元気に働いておられることです。今では見慣れた光景ですが、最初は本当に新鮮な驚きでした。

おりしも先日のニュースでは、東京圏を中心にしたある大手スーパーでは、シニア雇用の上限を、現在の70歳から75歳に引き上げる決定をしたそうです。別の大手スーパーでは、65歳以上のシニアの割合が、6%を越えたとありました。確かにそのスーパーでは、シニアのテキパキした働きぶりが目についていました。

雇用側も、シニアに働いてもらわないと、人材が確保できない時代なのです。あなたの年齢から想像しますに、あなたの、特に母上は、まだ60歳を超えたところか、60代前半ではないでしょうか。人は経済的な理由だけで働くのではありませんが、経済的に成り立っていない人は四の五の言わず、まず働くべきです。

母上は夫や娘に、経済的にはずっと依存して生きてこられました。それで自分が苦労や努力を惜しまないことで娘の負担を軽減したいと願う、本来の母心まで忘れたのでしょうか。

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