「性犯罪加害者の妻」が離婚を選択しない理由 逮捕されたその日から生活は一変するが・・・

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夫が痴漢で逮捕されたその日から、家族の生活は一変する(写真:bee / PIXTA)
痴漢をはじめとする性犯罪を犯した者にも、家族がいる。同居する家族がいるなら、その犯行を未然に防げたのではないか。しかし、ほとんどの人は「夫が電車で毎朝のように痴漢しているのではないか」「息子はいつか強姦をするに違いない」とは思わない。性は極めてプライベートな事柄で、家族にも明らかにしない。そこに犯罪につながる問題行動が含まれていれば、なおさらである。
家族の一員が性犯罪の加害者として逮捕された瞬間から、家族もその性的逸脱行動とは無関係ではいられなくなる。社会もそれを許さない。特に、本来なら加害者の性的パートナーでもある妻に向けられる目は厳しい。
性犯罪加害者について考えるシリーズ(第1回「痴漢犯罪の実態、「動機が性欲」は少数派だ」、第2回「痴漢常習犯は医療で治るのか、治らないのか」、第3回「注意!あなたも盗撮されているかもしれない」)の第4回は、加害者家族を待ち受ける試練の問題に迫る。

 

 今夜は夫の帰りが、いつもより遅い。帰宅が遅れるときは必ず連絡を入れるルールなのに。何かあったのなら、知らせてほしい。不安で胸が押し潰されそうな妻の耳に、電話の着信音が飛び込んでくる。まさか、警察からの電話だろうか。夫はまたやってしまったのではないか……。

性犯罪加害者を対象に再犯防止プログラムを行う東京・榎本クリニックでは、10年前から日本で初めて加害者の妻・母・父それぞれの「家族支援グループ」を行い、加害者家族をサポートしている。同クリニックで精神保健福祉士・社会福祉士として、再犯防止プログラムと家族支援グループ両方のプログラムディレクターを務める斉藤章佳氏は次のように語る。

家族は責められるべき対象なのか?

「夫が痴漢で逮捕されたその日から、家族の生活は一変します。日本では加害者に向けられるのとほぼ同じ視線が、妻や両親にも向けられます。しかし、家族は責められるべき対象でしょうか?」

たとえば妻は、次のような偏見にさらされる。「妻に至らないところがあるから、夫は痴漢に走った」「妻が夫を拒否してセックスレスだったから、夫はほかの女性に性的接触をした」――身近な人から、広く社会から、ひどい場合は裁判の場でも「妻のせいで夫は性犯罪を犯した」と直接、間接的に責められる。

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