交渉ベタな人は相手の話をちゃんと聞けない まずはすべてを受け入れてから対応を考えよ

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アンカリング効果で「そうか、不動産屋は近隣の相場は4000万円だと言っていたけど、実際の購入希望者はそんなに高い値段はつけてくれないんだな」と考えてくれますか。おそらくはそうでなく「4000万円が相場なのに、2000万円で買いたいと言ってくるなんて、相当図々しいか、買う気がないかのどちらかだな」と感じるのではないかと思います。

あなたがこの物件を3500万円くらいでもいいから売りたいと考えていたとしても、最初に2000万円の条件を出してきた相手が3500万円で了承するとは考えにくいですから、交渉の最初の段階からその後の交渉に熱意を持てず、別の買い手を見つけようとする可能性が高いはずです。

ですから私でしたら、まず「この物件にとても興味があるのですが、率直なところどのくらいの金額であれば売却を考えていただけるのでしょうか」とたずねて、最初の条件提示を相手にお願いします。

もちろん、先に相手に条件を出してもらうと、相手の本音をうかがい知ることができるのでその後の交渉も進めやすくなります。この物件をなぜ売却することになったのか、いつまでに売却できればいいのかなどを聞き役に徹して耳を傾けます。

交渉の最初には以下の5つのことを聞き出せればベストです。

①相手にとっての最優先事項(価格か、納期か、性能か)
②相手の強みと弱み
③相手の期限
④相手のボトムライン(最低限達成したいこと)
⑤相手が交渉に合意できなくても困らない代替案

自分から条件提示するときに気をつけたいこと

ただ、すべての交渉で相手からの条件提示を待てばいいわけではなく、時には自分から最初の条件提示をしなければならない場合もあります。このような時には、「無茶ぎりぎりの条件を提示しろ」と言う人もいますが、私はこれもおすすめしていません。

確かに、たとえばこちらは「3600万円以内なら買ってもいい」と考え、相手は「3500万円以上なら売ってもいい」と考えていたとしたら、最初から「3600万円で売ってください」と言ってしまうと相手の思うつぼで、「もっと安い金額から交渉をスタートさせればよかった」と後悔してしまうかもしれません。

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特に不動産や絵画など、相場があってないようなものの値付けは難しいものです。実は弁護士費用も似たようなところがあって報酬額を決めるのは意外と難しく、私はこれまでに依頼を受けたクライアントに費用を請求した際に「こんなに安くていいのですか」と言われ、内心「失敗した」と思ったことが何度もありました。

図々しい条件を出して駆け引きをする人は「あいつは駆け引きを仕掛けてくる油断ならないやつだ」と警戒されてしまいます。少しくらい目先の利益を失ってでも最初から掛け値なしの本音を伝える「駆け引きレスの交渉」をしたほうが、スピード決着が図れますし、社内からも取引先や業界からも信頼されますので、長い目で見た利益をたくさん受けられるに違いありません。
 

三谷 淳 未来創造弁護士法人 代表弁護士

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みたに じゅん / Jun Mitani

慶應義塾大学法学部法律学科出身。2000年弁護士登録後は横浜の大手法律事務所に勤め、数多くの裁判を手がける。このころ旧日本軍の爆雷国家賠償訴訟に勝訴し、数々のマスコミに取り上げられる。しかし、2006年に独立し三谷総合法律事務所(現・未来創造弁護士法人)を設立すると、裁判はたとえ勝訴しても、時間がかかり、依頼者に強いストレスをかけ、結果的におカネも回収できないケースが多いことに気づき、徹底的に交渉術や紛争予防法を研究する。1日5件、週に20件、年間1000件の交渉を実践し、「日本一裁判しない弁護士」と呼ばれるようになる。紛争の早期円満解決や予防は、トラブルを抱えるクライアントだけでなく、企業経営者からも絶大な支持を受け、現在では「経営を伸ばす顧問弁護士」として地域、業種を超えて全国各地の上場企業から社員数名の企業まで100社近くの顧問弁護士を務める。

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