交渉ベタな人は相手の話をちゃんと聞けない まずはすべてを受け入れてから対応を考えよ

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私の営業の先生でもある友人は「No needs No presentation(ニーズのないところで商品説明をするな)」と言っていました。ニーズがないところで売ろうとすると押し売りで嫌がられるが、ニーズがあるところで売ろうとすると感謝されるうえにおカネももらえるというわけです。

「聞くことは最大の譲歩」

3つ目が最も大事な理由です。「聞くことは最大の譲歩」だということです。人は、自分の話をよく聞いてもらい、心から共感してもらえると、自分が主張していた条件を受け入れてもらえなくてもあまり気にならなくなるのです。

たとえば、もしあなたが一方的に相手に言いくるめられたとか、全部相手の言いなりになりそうだと感じたら、相手が今出してきている条件を了承することはできないのではないでしょうか。相手が誠意をもって話を最後まで聞いてくれ、自分の思いや立場を本当に理解してくれたとしたら、それだけで合意してもいいかという気持ちになりませんか。

わかりやすい例としては、飲食店で皿に髪の毛が落ちていたとクレームを言うお客様をイメージしてください。その時、「皿に髪の毛が落ちていても味も変わらないし、健康に悪影響はありません」などと言ってしまったら、お客様は怒り出し、代金を返しても納得してくれません。

お客様の話をじっくり聞き、自らの非を認め、今後気をつけることを伝え、指摘してもらったことに感謝する態度を示せば、お客様は自分の話に耳を傾けてくれたことに満足し、代金を返せとは言わないはずです。

相手の話を聞くことは駆け引きではありませんから、興味を持って真剣に聞いてください。時折相手の目を見てうなずくなど、共感や同意は態度で示さなければ伝わりません。そして、褒められて嫌な人はいませんから、相手のすばらしいところやすごいことを見つけた時にはすかさず「すごいですね。自分にはまねできません」と褒めてください。

欧米流の交渉術では、「最初のオファー(条件提示)は自分から先にするのが基本」と教えることが多いようです。先に条件を提示するとそれがその後の交渉の基準になるという、いわゆる「アンカリング効果」があるので、自分に有利な結論を導くことができるというのがその理由です。

ですから、最初に提示する条件は「ある程度図々しくても良いので自分に有利な条件を出すべきだ」と言うのですが、はたして本当にそうでしょうか?

たとえば、あなたがこれまで所有していた不動産を売却しようと考えて、不動産屋に仲介を頼んだとしましょう。不動産屋には「買い手次第ですが、近隣の相場は4000万円くらいですから、3500万円から4500万円で売れるのではないでしょうか」と言われていたとします。

そこに、この物件が売りに出されていることを見つけた私ができるだけ安く購入しようと考えて、「2000万円で購入させてください」と最初の条件を出したとしたら、あなたはどのような印象を受けますか?

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