富裕層が頼る「タワマン節税」に潜むリスク 価格が「変わらない」「上がる」前提でいいのか
富裕層への課税強化が始まりました。国税庁は今年10月に「重点管理富裕層プロジェクト」を立ち上げ、今後、超富裕層の資産や投資活動の情報収集と監視を拡大していくことを明らかにしました。富裕層の海外への資産移転対策として、2017年度の与党税制改正大綱では、財産を譲られる側と譲る側の両方が海外に移住して5年を経過した場合、海外にある資産には相続税も贈与税もかからないという現行規定の期間を、同10年超に引き上げる方向で検討が進められています。
そして、税制改正大綱のなかで、もう1つ、富裕層の節税策を封じる方法として検討されているのが、「タワーマンションの高層階ほど相続税の評価額を高くする」ことです。いわゆる「タワーマンション節税」への対策です。拙著『お金持ちはどうやって資産を残しているのか』から、その内容を具体的にご紹介しましょう。富裕層ではないからといって、決してひとごとにはできない話です。
タワーマンションを買うと節税になる理由
そもそも「タワーマンション節税」とはどのような節税法なのか。この点から説明をしていきましょう。
マンションの評価額は、土地と建物、別々に計算されます。総戸数が多いマンションほど、各戸の土地の持ち分は小さくなるので、土地の評価額は小さくなります。また、建物は、同じ専有面積であれば、低層階でも高層階でも評価額は同じですが、市場価格は高層階ほど高額になります。まず、ここが最大のポイントです。
相続税が発生する場合、被相続人(財産を譲る側)の財産の価格は、財産評価基本通達(国税庁が定めている評価基準)によって決められます。この金額を「相続税評価額(以下、評価額)」と呼びます。この評価額が高いほど相続税の税額が高くなり、評価額が低くなるほど、税額は低くなります。
つまり、相続税額を低くしたいなら、「あらかじめ、持っている財産の評価額を低くしておく」必要があります。そしてこの評価額を低くするためのひとつの方法が、「タワーマンションの高層階物件」の購入なのです。「時価は高く、評価額は低い物件」を所有することによって、相続税額を低くするメリットがあるのです。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら