本当に強い会社には明確な「ビジョン」がある 「社員サイズ」に落とし込み、体現しよう

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「世界中にさわやかさをお届けすること
 前向きでハッピーな気持ちを味わえるひと時をもたらすこと
 価値を生み出し、前向きな変化をもたらすこと」
スターバックスコーヒー

「人々の心を豊かで活力あるものにするために――ひとりのお客様、一杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティから」
フェイスブック

「共有を広げ、世界をもっとオープンにし、人々のつながりを深める」

私たち人間が求めているものには、共通点がある?

おもしろいのは、製品も違い、企業規模も違い、社長のキャラも違うのに、言葉にしたとき、そのコンセプトは非常に近いものになるということだ。人々の生活の質を変えるとか、人々を幸せにする、健康に貢献する、など。私たち人間が求めているものは、根底の部分では共通しているのかもしれない。

ビジョンは、大きければ大きいほどいい。もちろん、広げた大風呂敷は本気でたたんでいかなければいけないので、心からコミットできるビジョンでなければ意味がないが、本気で取り組めるビジョンの中で最も大きなビジョンを設定する必要がある。

日本人は、とかく失敗を恐れる傾向が強い。その中で大きなビジョンを持つというのは、実はなかなか大変なことだ。失敗を恐れるあまり、チャレンジ自体を敬遠しがちになる。ビジョンについて話し合ってもらっても、とかく無難にまとまってしまう。そこをなんとか頑張って、壮大なビジョンを作るのが、経営者の務めでもある。

というのも、人の心理には「コンフォートゾーン」というものが存在するからだ。このコンフォートゾーンは、文字どおり心地よい場所のことである。過去の経験、体験から自分で作り上げてきた「安全・安心な場所」。そこから一歩出ようとすると、「失敗したらどうしよう」「どうせ無理だ」「不安でたまらない」といったメンタルブロックが強烈に発動する。問題は、そのコンフォートゾーンが、必ずしも現状から見て望ましいものだとは限らないということだ。

しかし、大きなビジョンというのは、そのコンフォートゾーンを一気に引き上げる役割を果たしてくれる。ビジョンに強くコミットすることができれば、そのビジョン自体が自分のコンフォートゾーンになってくるのだ。そうすると、そのコンフォートゾーンに自分がいなかったとき、コンフォートゾーンに戻りたくてしょうがなくなる。つまり、ビジョンに沿った行動を取ることが当たり前になってくるのだ。これが社員を一気に変えるほどの威力を持つ。

ビジョンが変わるとき、それは波が伝播するように、周囲に伝わっていく。まず真っ先に変わるのは、リーダーである。

ある商社社長のMさんは2代目社長。2代目といっても、一度倒産の危機に陥り、そこからV字回復を果たして現在に至る。親から受け継いだ会社をただ維持しているというわけではなく、しっかりとした経営手腕と情熱を持っている。そのMさんの一番の悩みは、離職率の高さ。新入社員が入っても、1年、2年で、どんどん辞めていくことだった。

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