なお、あれほど壮麗で広大な遺跡だと、毎年、世界中から観光客が押し寄せて経済を潤してくれるので、これこそ未来永劫に経済効果が続く国家への贈り物ではないか。ただ、ご多分に漏れず、常軌を逸した規模の公共投資をすると、軍備などがおろそかになり、他国の侵略を許して滅ぼされてしまうわけであるが、同じようなストーリーで私が好きだった都市として第7位に君臨するのが、インドのアゴラ、おめでとう!!
やはりタージマハールですか、との声が聞こえてきそうだが、このタージマハール、実際に行くと、美術魂の薄い私にして、その幻想的な美しさにすっかりうっとりしてしまった。そもそも愛する嫁さんが亡くなったということで、ムガル帝国の王様が国家財政を破綻させてまで白い大理石で造った妃のためのお墓というから、すごい話ではないか。ただ、この巨大な白い大理石は数百キロ先の遠方から運ばれており、そのために私の大好きな象さんが酷使されたということなので、動物愛好家の私としては笑っていられない。
しかし、タージマハールの周辺には観光客をあてにしたコブラ使いの叔父さんや、恐ろしくポンコツの自転車の後ろの席に載せてくれる“タクシー”、そして“タージマハールと同じ材料”というのをうたった大理石家具のお店が立ち並んでおり、その何百年前だかの愛のお墓建築のおかげで、今でも観光業が非常に発達している。
私もこのタージマハールの傍でコーヒーテーブルを買ったのだが、これがまた美しい。私はイスラム建築や幾何学的なムスリムアートが好きなわけだが、その美しく繊細で複雑にして統率のとれているパターンが白い大理石の表面を華麗に彩る。300ドルを払って買ったこのコーヒーテーブルは、残念ながら私がホテルでバナナを上において数日外出したため、帰ってきたらバナナが腐っていてその酸で早くも表面がメルトダウンしてしまった。しかし、その後裏に“Made in China”と書いてあるのを発見し、悲しみも半減したのであった。
ちなみにタージマハールを建てた王様・シャージャハーンが性懲りもなくそのタジマハールの対岸に、自分のお墓として黒い大理石で同じ形の宮殿を建てようとして財政が底を尽きて達成できなかったというのだから、迷惑な話である。
ご存じのとおりこれ以降、ムガル帝国は国力が衰えイギリスによる侵略を許すわけだが、あまりにも為政者がロマンチストだとその国民は大迷惑だ、ということであろう。ただ、アンコールワットと並び世界中から末永く観光客を呼び寄せ、高くついた初期投資の元を未来永劫にわたって回収しつづけるタージマハールを建造された王様に、座布団1枚、心の中で差し上げる所存である。どこぞの国も、国土強靭化計画、とかいって無駄な公共投資を中途半端に全国にばらまくくらいなら、いっそのこと1カ所に200兆円投下して、向こう1000年人を呼べるような公共投資をされてはいかがか。
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