日本と共通する問題?
ムーギー:そうか。イタリアの政治も日本の政治も混迷を極めているわけだが、イタリアといえば輝かしいローマ帝国の長期にわたる繁栄があり、人材にも恵まれた強国としての歴史が長かったわけだが、今、何が駄目になっているのか?
ブルーノ:イタリアは1960年、70年代にヨーロッパ中で大きなイタリアブームを巻き起こしたが、その後、長らく低迷してきた。問題は大きすぎる公共セクターで、公務員の失業対策で不要な中間職を増やし続けた結果、誰も働いていない不要なポジションが多く、極めて非効率になっている。それでも2000年代に2007年くらいまでは景気がいい時期があったのだが、リーマンショックのときは大した影響もなかったが、ユーロ危機のときにいちばん打撃を受けた。
ムーギー:ユーロ危機のとき、イタリアで何が起こったのか。
ブルーノ:われわれは不要な公共投資や公務員の数を非常識なサイズに拡大してきたので、負債が膨れ上がり、ユーロ危機のときに一気に長期金利が上がった。2007年とか08年までは低金利を維持できていたのだが、膨らむ負債とともにある時、一気にスプレッドが広がった。
イタリアの強みは製造業と観光業
ムーギー:なんか、これからどこぞの国で起ころうとしていることの予兆みたいな話だが、そんな中でも明るい話題があるだろう。たとえばイタリアで、まだ国際競争力のある産業は何か?
ブルーノ:これはあまり認識されていないが、イタリアは製造業の強さはドイツに次ぐポジションにある。服飾やラグジュアリーブランドのイメージが強いが、フィアットの自動車だけでなく自動車部品でも競争力がある。よくポルトガルやスペインと同じようにみられることがあるが、われわれの違いは負債の裏に、強い製造業という産業的裏付けがまだあることだ。ちなみにエアロスペースの分野でも世界最高水準の競争力を持っている。
金融セクターではグローバルバンクはないが、ヨーロッパ全域に広がるリージョナルバンクでは強い銀行もある。ちなみに私のマッキンゼーでのコンサルティングプロジェクトも金融関連がほとんどだった。農業もフランス並みに盛んでクオリティが高い。
なお、観光業に関しては、フランスに比べまだまだやるべきことが多いと思う。私はパリよりローマとかのほうがよっぽどチャーミングで歴史と由緒のある都市が多いのに、フランス政府は観光誘致にいい仕事をして、パリが世界一、外国人観光客が多い。しかしローマのほうが魅力的で、ほかにもシシリーなど行くべきところがたくさんあるのに、イタリア政府は何もしていない。
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