東急ハンズは、DIY用の材料や工具、ユニークな生活雑貨など、豊富な品ぞろえを持つ。ある商品を買いに東急ハンズに行ったら、販売員がもっといい商品を提案してくれた。東急ハンズに行くと、面白い新商品との出会いがあり、ワクワクする。そういった店舗体験の提供を、東急ハンズは強みにしている。
O2Oも同様の考え方。世の中のO2Oの主流であるクーポンなどの「お得感」ではなく、消費者の商品に関する「課題解決」や「ワクワク感」といった点に力を入れる。東急ハンズでは、クーポン施策はハンズのお客には有効ではないため、ほとんど実施していないというのも興味深い。
「お客様は、たとえば結婚式や誕生会などのイベント用に面白い商品がないかな、などと考えて来られる。求められているのは、“課題の解決”か“ワクワク感”のどちらかで、クーポンが使えるとか、お得感を目当てに来店するお客様は基本的に少ない。過去に、フェイスブックでクーポンと商品紹介を同じ日に投稿したときの例が象徴的。商品紹介のほうが5倍以上の差で消費者の反応がよかった」。
緒方氏は、東急ハンズの消費者像をこう分析する。
前述の、リアル店舗での売れ筋商品のリアルタイム表示は、ちょっとした“ワクワク感”を狙った機能のひとつ。東急ハンズ店内をぶらぶら歩いていると、自分の予期しない面白い商品が目に飛び込んでくることも多いだろう。そんな“偶然の出会い”をネット上でも演出しようとしたものだ。
レコメンドや検索では実現できない商品との出会い。しかも、適当にランダムに表示されているわけでなく、誰かが今まさに買った商品がわかる楽しさ。売れ筋商品なので購買の後押しとしても役立つ。
前月まで傘を売っていた店員がエンジニアに!?
O2Oの推進部隊は、緒方氏をリーダーとし、PR系が2人、マーチャンダイジング系が7人。ほかに30人からなるシステムエンジニアのチームもある。
「ネットストアの顧客情報、会員情報、商品情報など各データベースは内製。楽天、アマゾンにも出店しているが、表側部分だけを借りているだけ。裏側の機能はAPI(Application Programming Interface)で提供し、リアルタイム性も実現している」と緒方氏は話す(APIとは簡単に言うと、東急ハンズの開発した機能を外部のウェブサービスなどから簡単に利用できるようにするための決め事)。
東急ハンズにとって、システムの内製化は、コストやスピード面だけでなく、顧客目線を意識したものでもある。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら