趣味は恋愛。付き合うなら「ギーク」です 石黒不二代・ネットイヤーグループCEOの好き嫌い(上)

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 本格的な評伝や自身による回想録を別にすれば、経営者の好き嫌いは外部からはなかなかわからない。その人の「好き嫌い」に焦点を絞って経営者の方々と話をしてみようというのがこの対談の趣旨である。この企画の背後にある期待は3つある。
 第1に、「好きこそ物の上手なれ」。優れた経営者やリーダーは、何ゆえ成果を出している  の か。いろいろな理由があるだろうが、その中核には「自分が 好きなことをやっている」もしくは「自分が好きなやり方でやっている」ということがあるはずだ。これが、多くの経営者を観察してきた僕の私見である。
 第2に、戦略における直観の重要性である。優れた経営者を見ていると、重要な戦略的意思決定ほど理屈では割り切れない直観に根差していることが実に多い。直観は「センス」といってもよい。ある人にはあるが、ない人にはまるでない。 
 第3に、これは僕の個人的な考えなのだが、好き嫌いについて人の話を聞くのは単純に面白いということがある。人と話して面白いということは、多くの場合、その人の好き嫌いとかかわっているものだ。 
 こうした好き嫌いの対話を通じて、優れた経営者が戦略や経営を考えるときに避けて通れない直観とその源泉に迫ってみたい。対談の第3回は、アメリカのシリコンバレーと日本の両方でITビジネスの経験を持つ石黒不二代さんにお話を伺った。石黒さんはメディアにもたびたび登場する論客かつ美貌の経営者だが、好き嫌いの話を伺ってみると、その実像はパブリック・イメージとかなり違うということがわかって面白い。

バスローブとワインというイメージ?

楠木:僕は人の好き嫌いが大好きでして、経営者の方に、良しあしについてのお考えよりも、主観的な好き嫌いを聞くという対談というか雑談です。石黒さんは見た目でいえば、好き嫌いがはっきりとありそうに見えますね。飛行機で肉か魚かと聞かれたら、絶対に肉。「とりあえずシャンパン……」みたいな。メディアでしか知らない人からすると、家でバスローブを着てワイングラスを回していそうなタイプ。「私の血はワインでできるのよ」などと言いながら(笑)。

石黒:できていませんし、そんな血じゃありません(笑)。

楠木:手前勝手なイメージですけど。石黒さんご自身に伺って言い得て妙だなと思ったのは、「私はカネがかかる女だと誤解される」というお言葉。僕もいちばん初めにお目にかかったときは、そう思いました。外見から受ける印象とか、たぶんキャリアから来るものもあるでしょうね。

スタンフォード大学でMBA取得され、シリコンバレーをよく知っていて、インターネットのベンチャー企業をつくってIPOを果たした。メデイアにとっては、「女性経営者のアイコン」という感じです。しかし、石黒さんを知るようになると、だいぶイメージとは違うことに気づかされます。そのあたりを今回はお聞かせいただきたいと思います。

石黒:ワインだシャンパンだというより、接待はむしろ嫌いで、毎日、外で飲むなんてありえないですね。ネットイヤーグループはわりとドライな会社で、接待はほとんどしないのです。ワインは飲みますが安いものですし、最近はダイエットのために焼酎を飲むようにしています。仕事で遅くなるので難しいですが、なるべく夜の8時までにご飯を食べようと思っています。

楠木:結構、おうちでご飯を作られるのですか?

石黒:週に平日5日のうち、3回は作りますね。うちで食べるのが好きで、とにかく外に出ないようにしています。

楠木:じゃあ、ご自身でお食事を作って、淡々と召し上がって。バスローブを着ることもなく……。

石黒:着るわけないじゃない(笑)。しかも、私はお弁当を作って持ってきていますから。息子が中高生の頃は朝ご飯を作って、昼はカフェテリアで取っていましたが、夕ご飯も出勤前に作って、冷蔵庫に入れて。そんな時期がありました。

楠木:「石黒さん=バスローブをまとった肉食女王」というイメージが世の中的にはありますが、実際はずいぶん違いますね。

石黒:その誤解と偏見に満ちたイメージ、今、まさに先生が作っていますよ(笑)。

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